今の日本に「自国調達体制」を確立できる力量があるか
一方、中国の動きも見逃せない。
中国は米国の制裁を受けて、中核産業に位置付ける半導体を国内で自給できる体制の確立を急ぐ。巨額な補助金により国内での増産投資を後押しし、半導体供給の覇権獲りに動く。
中国の2020年の世界生産シェアは15%。だが、2030年には台湾を抜いて24%のシェアに上昇し、世界最大の半導体王国になるとの予測もある。
米欧中が巨額の補助金も惜しまず台湾、韓国に過度に依存する半導体供給の構図から脱し、「自国・地域第一主義」に大きく傾き、覇権争いは激しさを増す一方だ。
それに対し、日本は蚊帳の外に置かれたのも同然だ。
何しろ、今の日本に自国調達体制を確立できる力量があるかとなれば、大きな疑問符が付く。実際、1980年代に世界生産シェアで50%を誇った「日の丸半導体」は今や15%まで落ち込み、見る影もない。台湾、韓国勢に伍して戦えるのは東芝から分離・独立したキオクシア(旧東芝メモリ)などに限られる。
米欧中に大きく見劣りする、日本の半導体戦略
そのキオクシアも米半導体大手のマイクロン・テクノロジーとウエスタン・デジタルから買収提案を打診されるなど、激動する今の半導体業界の状況を反映している。
この現状を踏まえ、経産省は「半導体・デジタル産業戦略検討会議」の初会合で、先端半導体の国内での生産は海外勢を誘致して量産体制を構築する構想を提示したのである。
同時に経産省は、先端半導体の技術を支える製造装置や半導体材料といった周辺領域で日本勢が世界で高い競争力を持ち、大きな存在感を堅持していることから、周辺領域を含めたオールジャパンでの製造技術構築による生き残りをもくろむ。
経産省の誘致により、TSMCが今年2月、日本に研究開発拠点を設置し、次世代半導体材料の開発することを発表したのはその表れだ。
それは「日の丸」へのこだわりを捨て、外資に頼らざるを得ない今の日本の半導体産業の置かれた現実でもある。この現実は何とも重い。
経産省が半導体の国内生産に音頭を取り始めたとはいえ、その対応は弥縫策にしか映らない。闇雲に国内での生産を増やしても課題は解決しない。経産省主導のそれは、国・地域を挙げて半導体産業をテコ入れする米欧中のそれからは大きく見劣りする。後手に回る政策対応からは日本の将来展望は見えてこない。