ルッテ首相への不信感をあらわにする連立パートナー

ルッテ首相は第2党であるD66に加えて、これまでも主な連立パートナーであり15議席を持つ中道右派のキリスト教民主アピール(CDA)、および5議席を持つ宗教政党・キリスト教連合(CU)の4党での連立を画策した。この連立が成立すれば150議席のうち78議席の過半数に達するはずだったが、3党はいずれも連立入りを拒否した。

背景には、ルッテ首相に対する不信感の高まりがある。首相は今年1月に辞任したが、その理由である児童手当の不正の告発に大きな役割を果たしたCDAのピーター・オムツィクト議員を新政権で要職に任命し、懐柔を図ろうとしたスキャンダルが持ち上がった。この動きにD66とCDAが反発、4月2日の議会で首相の不信任案を提出した。

不信任案は反対多数で否決されたが、これでD66とCDAの連立入りは困難となった。さらにCUのセーヘルス党首が3日付の地元紙に連立協議への参加を拒否する構えを見せ、連立協議は行き詰ることになった。コロナ対策への高評価を追い風に選挙を有利に戦いたかったルッテ首相は、逆に求心力の低下を招いてしまったわけだ。

ルッテ首相は引き続き連立協議に取り組む方針を示しているが、D66らが参加するとしても首相の発言力の低下は否めない。そうなるとチラついてくるのが、極右政党であるPVVとの協力だ。しかし過激な主張を展開するPVVを政権に招き入れることは劇薬に等しく、第1次政権で閣外協力を仰いだ際にも、結局は物別れに終わった経験がある。

行動制限の長期化で高評価が息切れしたドイツ

第2次ルッテ政権も発足までに7カ月を要するなど、オランダの連立交渉の長さは有名だ。とはいえ今回のオランダ政局の混迷は、コロナの初動対応が高評価された政権でも、コロナ禍の長期化を受けて求心力を失っている様子をよく示している。同様に、今年9月に総選挙を控えるドイツでも、メルケル首相のコロナ対応への高評価が息切れしている。

9月の総選挙で引退するドイツのメルケル首相は、コロナ前まではレームダック化が顕著であった。しかしコロナ禍での卓越したリーダーシップが有権者に評価され、首相を擁する与党・キリスト教民主同盟(CDU)と姉妹政党であるキリスト教社会同盟(CSU)の支持率は一時40%近くまで回復、選挙戦が有利に運ぶかに見えた。

しかし3月に入ると、人々がコロナ禍に疲弊する中で生じたCSU議員によるマスク取引の汚職疑惑を受けて、CDU/CSUの支持率は20%台半ばまで急落した。3月14日には総選挙の前哨戦となる2州の議会選でCDUは大敗、環境政党であり支持率で二位につけている同盟90/緑の党や三位の社会民主党(SPD)に票が流れる結果となった。