多忙で心身の健康を損ねたマネージャー

生駒正一は、トヨタ時代から一貫して「人づくり」にたずさわってきたトレーナーです。国内はもとより、海外工場でもTPS(トヨタ生産方式)の指導を重ね、衣浦工場の人材育成グループの課長として階層別教育にも関わりました。

その生駒が、ある指導先の企業で、多忙な状況に押しつぶされてしまったマネージャーが日常管理板で復調したケースについて話してくれました。

オフィスでマルチタスク
写真=iStock.com/AndreyPopov
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「その企業では、スケジュールは各メンバーの頭の中にしかない状態で、それぞれが責任をもってスケジュールを守り、目標をやり遂げるという仕事のやり方をしていませんでした。

そのため、毎度、締切間近になると進行の遅れが露見して、マネージャーである課長も現場に入って奮闘し、何とか締切に間に合わせていました。

しかし、そのような状況が続き、過度な負担がかかっていたことで、課長は心身の健康状態を損ねてしまい、休職を余儀なくされてしまったのです。

「今何をやらなければいけないか」を全員が明確にわかるように

課長の役割は、現場でプレーヤーとして率先して仕事をすることではありません。

メンバーに仕事を割り振って担当させ、やり遂げるように管理することが、マネージャーとしての課長の役割です。

そこで、日常管理板を活用して、『各メンバーが受け持っている仕事を進めるために、今何をやらなければいけないか』を皆がわかるようにし、全員がお互いの状況に気づけるしくみにしました。

あるメンバーの進行が遅れていれば、気づいた同僚が遅れを指摘して促したり、アドバイスしたりしてサポートできるようにしたのです。

こうして、メンバーたちも期日までに仕事をやり切れるようになり、課長も本来の管理業務に集中できる環境に変わっていきました。やがて、心理的な負担が減ることで体調も改善し始め、職場に完全復帰できたのです。」