ミスを執拗に責めてくる上司をうまくかわす方法はあるでしょうか。対応を誤ればさらにエスカレートする危険性もあります。産業医の井上智介先生が勧める“棒読み話法”とは——。

※本稿は、井上智介『どうしようもなく仕事が「しんどい」あなたへ ストレス社会で「考えなくていいこと」リスト』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

「残念な人」が自分の上司に

残念な人が身近にいると、誰だってそんな人とは関わりたくないと思いますよね。でも、その相手が上司だとすると、関係を断ち切るわけにもいかず、心を悩ませている人が多いのではないでしょうか。

私が考える「残念な人」というのは、ひと言でいうと、「相手の気持ちがわからない人」です。攻撃的な言い方をしたり、ミスを執拗に責めたり。中には、「このミス、4回目だぞ」というように、回数まで数えている人もいますからね。

こういうタイプは、本当に面倒くさいです。

過去のミスを持ち出されても、もはやそれに対するお互いの熱量が違います。相手側は、雪だるま式に攻撃材料をふくらませているけれども、こちら側はそうではありません。だから、その熱量の差によって、余計にしんどくなってしまうのです。

「自分が悪いのかな…」と考えなくていい

また、恐ろしいことに、最初は「相手がおかしい」と思っていても、ネチネチ言われ続けたり、攻撃され続けたりしていると、「自分が悪いのかな」と思い始めることがあります。

こういう残念な上司というのは、悪目立ちしているので、最初は周りの人がかばってくれることが多いです。「あの人はそういう人だからさ」「そんなの気にしなくていいよ」など、いろいろ言ってくれるのですが、時間が経つと、「でも、言われていない人もいるしな」「やっぱり自分がダメだから言われるのかな」など、自分の能力を否定し始めてしまうことがあります。

そうやって苦しんで、心を病んで、産業医である私のところへやってくる人が、悲しいけれどたくさんいます。

だから、そういう残念な人が身近にいる場合は、「物理的距離」と「心理的距離」をとることがとても大切です。