復興基金の稼働と密接に関わるEUの増税計画
ヨーロッパで「コロナ増税」に向けた議論が活発化している。欧州連合(EU)は今年から、新型コロナウイルスの感染拡大で傷ついた経済の復興を後押しするEU復興基金を稼働させる。財源は債券の発行で賄われるが、その返済の原資を「国境炭素税」や「プラスチック新税」、それに「デジタル課税」などで集めようというわけだ。
EUはコロナ禍からの復興に当たり、脱炭素化とデジタル化の二本柱を掲げている。これはコロナの流行以前よりEUが推し進めたい経済戦略であったが、幸か不幸か、コロナの流行が大きな推進力となった。そのためEUの復興基金自体が、脱炭素化政策とデジタル化政策を目的とする各国の取り組みを財政面から後押しする仕組みとなっている。
コロナ禍からの経済復興のみならずその構造改革まで一気に持っていこうというのが、EUの大きな狙いである。「国境炭素税」や「プラスチック新税」は、使途が特定される目的税としての性格のみならず、行動変容を促す課徴金としての性格も持っている。これらの税から得られた収入は基本的にEUの共通予算に繰り入れられる模様だ。
「デジタル課税」はどうだろうか。いわゆるGAFAに代表される米国発のビッグテックに関しては、その法人税逃れが問題視されて久しい。彼らに売上税を課すべきだという「デジタル課税」の議論が欧州を中心に盛んであり、コロナ禍で財政が逼迫したこともあってEUは一気に「デジタル課税」を推し進めたい腹積もりがあるとみられる。
所得税や消費税の増税が回避される理由
冒頭に述べたように、EUは復興財源の一部を増税で賄おうとしているが、そのほとんどが法人を対象とする課税であり、個人向けではない。コロナショックで景気が極端に悪化、その後も停滞が続いているような現状で、家計の所得環境は厳しさを増している。こうした環境で個人向けの課税を強化することなど、まず不可能だ。