誰にでもイヤな人や苦手な人はいます。できるだけ距離を置きたいところですが、一緒に仕事をしなければならないことも。僧侶でマンガ家としても活躍する光澤裕顕さんが、そんなときに効くブッダの言葉を紹介します――。

※本稿は、光澤裕顕『生きるのがつらいときに読む ブッダの言葉』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。

2人の怒れるビジネスパーソン
写真=iStock.com/AntonioGuillem
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身分は前世での行いによって決まるのか

ブッダの言葉の中に、次のようなものがあります。

生れによって賤しい人となるのではない。生れによってバラモンとなるのではない。行為によって賤しい人ともなり、行為によってバラモンともなる。
『スッタニパータ』136

有名な言葉なので、聞いたことがあるという人も多いのではないでしょうか。

個人的には、革命的な一文だと思っています。なぜなら、ブッダの時代では当たり前だった、生まれによって身分が決まるという「常識」に真っ向から異を唱えた言葉だからです。

ここには、有名な「輪廻りんね」という考え方が関係しています。

「輪廻」とは、人をはじめとする生き物が、何度も生まれ変わって違う生命を生きるという思想のこと。

余談ですが、仏教が生まれる前から、インドやネパールでは「輪廻」が当たり前のように信じられていました。

「輪廻」と聞くと、仏教発の考え方のように思われがちですが、実は仏教より前から存在していたのです。

仏教が「輪廻」を言い出したのではなく、「輪廻」のある土壌に仏教が生まれてきた……。そう表現した方が適切かもしれません。

話を元に戻しましょう。

「命は何度も生まれ変わりを繰り返す。だから、生まれたときの境遇は“過去”に理由が隠されているはずだ」

ブッダ以前の世界では、そのように考えられていました。

良い身分に生まれた人は、前世で良い行いをしたから。そうでない人は、前世で悪い行いをしたから。

文字通り、自業自得ということです。

しかし、それは誤りだと主張したのがブッダでした。