綿あめやヨーヨーも登場する「日本風の夏祭り」
上海の虹橋地区というエリアはもともと日本人駐在員などが多く住んでいるところで、日本とのつながりも深いのだが、そのエリアにあるショッピングセンターで、「夏日祭」という夏祭りが開催されたのだ。
調べてみたところ、その夏祭りは数年前から行われているということだったが、露店で販売している綿あめやヨーヨー、お面などや、盆踊りなどの演出の質は年々高まっており、上海在住の日本人の友人によれば「どんどん本物の日本に近づいている感じ」という話だった。東京にいる私も動画や写真でその様子を見たが、そこで見る限りでは「これはまるで日本じゃないか」と思ったものだった。
もちろん、日本人の目で細部までよく見れば、日本の夏祭りとは少し違っていて、違和感があるのだが、それでも、かなりいい線までいっている。
小売店で、単に日本の商品が販売されているというだけならいざ知らず、「夏祭り」のような、日本でしか行われていないイベントまで上海で行われていて、そこにわざわざ、ちゃんとした浴衣を着て遊びに行く中国の若者が大勢いることに私は驚かされた。
日本文化への敬意が「ロス」を引き起こしている
上海に住む友人にその話をすると、友人は私にこういった。
「ここ数年、日本の観光地だけでなく、日本各地の路地裏とか、小さなカフェなど、いろいろなところに行った経験のある中国人が急増したんです。節分の豆まきや雛祭りといった、日本の伝統文化や習慣にも深い関心を持ち、リスペクトの気持ちも抱くようになった。ネットの力も大きいですよね。ネットで日本に関する情報をほとんど入手できるので」
「それに、中国人自身の生活の質が向上して、日本のものをそのまま受け入れたり、共感できたりするくらいの高いレベルになってきています。その段階まできて、本格的な夏祭りなども開催できるようになりましたが、それでも、やはり本場とは違う。だからまた、自分の足で日本に行って、もっといろいろな経験をしたり、吸収したりしたいと思っているのです」
私は、これこそが、彼らが「日本に行きたい願望」の第2の理由であり、疑似体験であっても「日本ロス」を埋めて、精神的な充足感を得たいという彼らの本音ではないかと強く納得した。