8.次々にゴールを作り終らない行動を続けさせて、疲弊させる。
数百人に陽性者が下げ止まっているとして緊急事態宣言が延長されました。ゴールが移動して終わりが見えません。季節性となったウイルスと共存することになる今後の展望や、医療体制は語られません。

9.孤独を作りだし、周りに理解してもらえない気持ちにさせる。
外出者の増加数などを示し、他の人が、自粛している自分の不安を理解していないように思わせます。

10.助かったと思わせて絶望させる。
GoToで再開と思ったら中止、ワクチンで安心したと思ったら副作用情報。警戒宣言が明けそうで、継続を宣言。「持ち上げてガッカリ」の連続により朗報に喜べなくなって絶望していきます。絶望した人は何かにすがりたくなるものです。そして1からリピート。

どれも考え抜かれた手法です。人間の思考の弱点を突いています。これからも色々な局面で繰り返されるはずです。知っていて損はありません。

正しい提案はテレビに無視された

昨年度、私のもとに様々な取材依頼がきました。

患者さんへの説明を撮影させて欲しいとか、PCRを保健所にお願いしても断られたりつながらない映像を撮影したいとか、歯科医からクラスターが発生する可能性について取材したいとか、有名番組に出て陽性者増加やPCRについて現場の医師として語って欲しいといったものです。

当時、テレビは「映像」を求め奔走していました。危機が身近であることを示したかったり、シナリオに沿って演じるパペットが欲しかったのだと思います。私は彼らに「日本は、日本のコロナを考えればいい」「診療システムの分離とICUキャパシティの一時的拡大で経済活動と両立できること」を取り上げるよう提案しましたが全て無視されました。

移動し続けたゴールポスト

昨年2020年4月に「都内の患者発生状況は、昨日の時点で684人、ここ数日の推移は、78人、66人、97人、高水準で推移をしているところであります」とされ(注7)ロックダウンも辞さない対応が始まりました。5月の連休はステイホームが指示されました(注8)

通知を見ている日本人男性
写真=iStock.com/Fiers
※写真はイメージです

通年してみてみると、1日に陽性者が1000人を超えることも日常となりました。数十人で驚いていた事実はすでに忘却の彼方です。

「緊急事態宣言の8府県 感染者減少ペースが鈍化」ということで緊急事態宣言が継続されました。経済を優先して解除すると、コロナが広がるからかえって経済が壊滅するとさえ言われていました(注9、注10)