「汚泥ケーキ」ができるまで

汚水が浄化されるプロセスは理解できた。しかし、気になることがある。それは、沈殿池に大量に沈むウンチの混じった汚泥だ。まさか放っておくわけにはいくまい。

神舘和典、西川清史『うんちの行方』(新潮新書)
神舘和典、西川清史『うんちの行方』(新潮新書)

どこでどう処理されるのだろう――。訊ねると、水再生センターに隣接する北部汚泥資源化センターに案内された。

「ここは汚泥を処理する施設です」

そう言う職員のあとをついて歩いていく。すると、なにやら近未来のSF映画にでも出てきそうな巨大なコクーン状のタンクが見えてきた。なまじの大きさではない。「汚泥消化タンク」というらしい。それが12基も並んでいる。

この北部汚泥資源化センターでは、次の行程が行われていた。

(1)水再生センターの最初沈殿池や最終沈殿池に沈んでいる「生汚泥・余剰汚泥」をかき集め、ポンプで汚泥資源化施設へ運ぶ

(2)運ばれた汚泥はフィルター機能のある専用の機械によって水分をしぼり取られ、約95%の量になるまで濃縮される

(3)密閉された巨大な汚泥消化タンクで微生物の力を借りて、約36度の熱で約25~30日間温め、汚泥中の有機物を分解する

(4)(3)で生じた消化ガスはガス発電設備で発電、水再生センターや汚泥資源化センターを稼働する電力として利用。ほかの自治体では公共の施設や温水プールの稼働に利用されているケースもある

(5)消化タンクから引き抜かれた汚泥は「汚泥脱水設備」で脱水機にかけられ、さらに水をしぼり取り、「汚泥ケーキ」といわれる状態になる。汚泥ケーキは最初の汚泥の状態の約20分の1の体積になる

(6)汚泥ケーキは「汚泥焼却設備」で1000度近い高熱で灰の状態になるまで燃焼される。焼却灰は最初の汚泥の状態の約400分の1の体積になる

横浜市では、かつては汚泥資源化センターで灰状の汚泥を固めて煉瓦や花瓶を作っていたそうだ。トイレから流されたウンチがめぐりめぐって花瓶になり花を咲かせるとは、なんと夢のある話ではないか。

現在は、主に土と混ぜて「改良土」として建設資材に利用されている。他の自治体では、農作物を育てる肥料として使われたり、セメントの原料になったりもしている。

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