さまざまな後遺症の症状……背景にある4つの病態の中身
新型コロナについては、感染が始まった当初は、急性の重篤な肺炎を引き起こすことのある感染症と捉えられていました。ところが感染者を長期に追跡調査していくと、ウイルスがいなくなったにもかかわらず、感染しているときの症状が続く場合や時間がたってから違う症状が出るといった後遺症の報告が増えてきたのです。
ただこれまでは、その症状がさまざまであることや、感染が直接その後遺症の原因なのかといった症状と感染の因果関係がはっきりしないことなどから、その実態がなかなか明確にされませんでした。
新型コロナの後遺症として報告されている症状としては、倦怠感、呼吸困難、関節痛、胸痛、咳、味覚・嗅覚障害、目や口の乾燥、鼻炎、結膜充血、頭痛、痰、食欲不振、ノドの痛み、めまい、筋肉痛、下痢などがあります。これらは感染時の症状でもあります。そのほかに、記憶障害、睡眠障害、集中力低下、脱毛などがあります。
これまで行われた数多くの新型コロナ患者の経過観察により、後遺症は少なくとも下記の4つの病態が絡み合って起こっていると考えられるようになってきています(2)。4つめの集中治療後症候群以外は、軽症の患者さんでもみられる後遺症です。
・感染によって肺や心臓が障害されたことが原因で起こる症状
・ウイルス後疲労症候群:ウイルス感染により起こる、睡眠障害、高次脳機能障害、自律神経障害などを特徴とする筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)に似た症状
・集中治療後症候群:集中治療室(ICU)の治療により筋肉や脳の機能が低下することにより引き起こされる、身体障害・認知機能障害・精神の障害などの症状
明らかになってきた「ウイルス後疲労症候群」
最近、問題が明らかになってきた後遺症が、3つめに挙げた「ウイルス後疲労症候群」です。感染から回復した後でも体全体の不快感、倦怠感が残り、日常生活に支障をきたすといった症状を訴える方がいます。
なかには腕を上げるのもままならないほどの疲労を感じる場合もあります。このような症状は、筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)という原因不明の難病に類似していることから、「COVID-19後疲労症候群」とも呼ばれています。