BSチャンネルでCMゼロの番組を作る

──3本柱の2つ目、デジタル戦略については、今後は何をするのか。20年4月には、吉本興業とユーチューバー・プロダクションであるUUUM(ウーム)が資本業務提携を締結した。

新しいメディアの挑戦をさらに進める。デジタルに力を入れるという話は、コロナ以前から提唱していたから、コロナがあろうがなかろうが進めていたことだ。

メディアの歴史を見たら、デジタルへの挑戦は当然やるべきことだ。古くは舞台があって、ラジオがあって、映画があって、テレビがあってというようにきたわけで、ユーチューブやネットフリックスといった新しいメディアが出てきたら、新しいメディアで何ができるか楽しみながら挑戦するというのは当たり前のことだ。

ユーチューブでいえば、吉本はマルチチャンネルネットワーク(MCN)機能を持つ数少ない会社のひとつ。MCNとは、一言でいえばユーチューバーのマネジメントをする会社で、それだけ吉本はユーチューブ進出に本気だ。

もちろん、テレビがなくなるとか、映画やラジオがなくなるという話ではない。芸人が活躍できる場を増やすということで、新しい舞台のひとつがユーチューブということだ。

──新しい場といえば、21年度にはBS放送「よしもとチャンネル」(仮称)が開局予定だが。

今さらどうして円熟化したテレビ放送で事業をするのかという意見もあるが、僕はテレビ放送が円熟しているとは思っていない。テレビ放送は1953年から始まって67年が経つが、「たかだか67年」という感覚だ。

ゼロからテレビ放送というものを考えてみるといい。もしも2020年の今、テレビ放送が始まったとしたら、どんな放送局ができるのかと考える。

例えば、コマーシャルという概念がなかったらどうだろう。コマーシャルがあるから、テレビには「編成」というものがある。夜7時からはこの番組、8時からはあの番組と編成する。しかし、コマーシャルがなかったら、時間割は気にしなくなる。「じゃあ、このへんでこの番組は終わりにしましょう。次の番組に移りましょう」というふうに自由に番組がつくれる。だから、BSの「よしもとチャンネル」は、本当にコマーシャルなしでやって、まったく新しい番組をつくりたい。