大人は「家族」を再建しようとするが…

このタイプでは、継親を「親」として位置づける代わりに、別居親の存在は無視あるいは軽視されています。それどころか、別居親の存在を言葉にすらできないタブーとなっていることも多いのです。親や継親は疑うこともなく、子どもに継親を「親」として受け入れるよう求めます。大人側が主導して、この家族モデルを目指して「家族」を再建しようとするのです。その結果、子どもは実親のひとりとその親族との関係をまるごと喪失することになります。

子どもが以前の家族の良い思い出や実親の良いイメージを持っている場合には、それを否定するような態度や行動に反発・抵抗するのは当然のことでしょう。実母と継父のもとで育ったある女性は高校の家庭科の授業で宿題が出されたから、素直に実父のことを知りたいと思い写真を探しました。

また、本書で登場する別の女性が継父を「○○パパ」と呼ぼうとしたのも、もうひとりパパが増えたと思ったからです。大人が想像する以上に、子どもたちは柔軟に、親的な存在が複数存在するという事実を自然に受け入れているのです。

大人と子どもの間で家族観のズレが起きている

つまり、同居しているメンバーだけで「ふたり親家庭」を再建しようとする大人と、同居・別居にかかわらず「家族」を柔軟にとらえている子どもとのあいだで、家族観に大きなズレが生じていることがわかります。このズレに大人側が気づいたとき、理想の家族像が崩されたように感じ、大きなショックを受けてしまうようです。

このような大人側と子ども側の利害葛藤を乗り越える方法はないのでしょうか。著者たちが行ってきたインタビュー調査では、少数ではありますが、従来の通念的な「ふたり親家庭」をモデルとせず、創意工夫しながら再婚後の別居親子関係を継続し、両親が共同養育・並行養育というスタイルで子どもの成長に関わり続けている事例もあります。

ステップファミリー 子どもから見た離婚・再婚』(KADOKAWA)では、「代替モデル/スクラップ&ビルド型」とは違う、「ふたり親家庭」を前提としないタイプの実践事例をヒントに、ステップファミリーならではの関係形成のありかたを検討しています。

【関連記事】
孤独と絶望の20年「重度障害児と老親ケア」で睡眠障害を患う46歳女性が、それでも笑顔になれる瞬間
5歳児を虐待死させた継父が「親になろうとしてごめん」と泣いた理由
「毒親に感謝する必要は一切ない」私が両親からの教育虐待を告発した理由
「中学生になっても持たせたくない」弁護士の母が娘のスマホを絶対に買わない理由
子離れできない親が繰り返す、子どもの生活力を奪う"NGワード"