英米では新型コロナワクチンの接種がはじまった。医師の大和田潔氏は「新型コロナのワクチンは『mRNAワクチン』と呼ばれ、最先端の遺伝子治療の技術が詰まっている。がんや糖尿病の治療でも注目されている」という——。
COVID-19ワクチン開発
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最新医療技術が叶えた新型コロナのmRNAワクチン

本格的な冬になりました。コロナウイルスのワクチンに期待が寄せられています。イギリスやアメリカで接種が始まったワクチンは、「メッセンジャーRNA」(以下、mRNA)、と呼ばれる新しい技術を使ったものです。

コロナウイルスのmRNAワクチンは、どの従来型ワクチンにも属さない全く新規のものです。mRNAワクチンの技術は、水面下でどんどん進んでいたバイオテクノロジーを用いた最新医療技術の発露のひとつです。

従来のワクチンは、①ウイルスの活性を失わせた不活化ワクチンと、②弱毒化させた生ワクチンに分類されます。肺炎球菌ワクチンもインフルエンザワクチンも不活化ワクチンです。日常的に接種間隔を調節しながら臨床で用いられています(注1)

従来のワクチンは卵などの生きた細胞内でウイルスそのものを増やして利用します。mRNAワクチンは、専門の場所で遺伝子そのものを大量合成して作るものです。最新技術の粋を集めて作られたもので、作り方からして全く別ものです。

私は、RNA医療の第一人者である位髙啓史教授(東京医科歯科大学生体材料工学研究所)に、最新型mRNAワクチンについて疑問に思っていることを伺ってきました。2020年11月開催されたmRNA医薬品に関する国際学会で発表されました(注2、注3)

位髙啓史教授
筆者撮影
東京医科歯科大学の位髙啓史教授

少し専門的になりますが、伺ったお話を先に紹介します。