そうではなく、家で洗えないと思い込んでやみくもにクリーニングに出すのは、クリーニング屋が言うのもなんですが、お金がもったいないと思います。「でも、服の洗濯表示のタグに“ドライ”とあるから」という方がいます。

これは「ドライクリーニングできます」という意味で、「ドライクリーニングじゃないといけません」という表示ではありません。ドライクリーニングに出すか、家で洗うか、自分で決めてください、という意味です。

洗濯表示は、各アパレルメーカーが最も慎重な基準を示していて、この通りに扱えばトラブルにならない、というリスクヘッジなのです。だから、かなり制限がきつくなっています。店員さんに聞くと、「私は家で洗っていますよ」と教えてくれたりします。

ドライクリーニングは、服を傷めないが汚れは残っている

クリーニングに出すべきもの。皮革、レーヨン、キュプラ、アセテートなど。すべてに共通するのはなんでしょう? 水に弱いことです。水で洗えないものは、ドライクリーニングをしなければなりません。ところで、このドライクリーニングとはなんなのか、ご存じですか?

ドライクリーニング店で働く二人
写真=iStock.com/recep-bg
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ドライという名称どおり、水を使わずに洗う技術です。水の代わりに、石油系の溶剤を使います。生地をなるべく傷めたくない服にも、ドライクリーニングは適しています。

なぜかというと、水で洗うと、多かれ少なかれ繊維にダメージを与えるからです。石油系の溶剤というと刺激が強そうですが、じつは水のほうが生地に対する影響が大きいのです。

じゃあ、やっぱりドライクリーニングのほうがいいのかというと、そうとも言えません。ちょっと専門的な話になりますが、石油系の溶剤は油(油性)の汚れは落とせますが、水(水溶性)の汚れは落とせません。水の汚れとは、たとえば汗です。汗の汚れは、ドライクリーニングでは落ちないのです。

最近は、ドライクリーニングでは汚れが落ちないことを知って、クリーニング屋に水洗いをお願いする人が増えています。でも、やっていることは家庭と同じです。業務用の大きな洗濯機を使うだけの違いです。

洗濯物によってはドライクリーニングで油の汚れを取ってから、水洗いで汗の汚れを落とすケースもあります。

ドライクリーニング後の服の重さと、そのあとに水洗いした服の重さを測ってみたことがあります。水洗いしたほうが軽くなっていて、それが結構な違いで、びっくりしました。つまり、ドライクリーニングをしても、汗などの汚れがたくさん残っているということなのです。