いずれにしても、親子だから同居するほうが美徳ということはない。むしろ無理をして双方がストレスを溜め込むくらいなら、離れて暮らしたほうが絶対にいいと僕は思います。親が一緒に暮らしたいといい出したら、決してお互いのためにならないということをきちんと説明して、なるべく納得してもらうほうがいいでしょう。
といっても、健康や経済的理由で、どうしても親を引き取らざるをえないこともあるでしょう。その場合も、かなり広い家に住んでいるのでなければ、近くに部屋を借りるなどして、極力同居は避けたほうがいい。
ただ、この設問の対象となっている団塊世代より少し上あたりにいる親たちは、子どもと同居したいとそれほど切実には思っていないのではないでしょうか。いまさら子ども夫婦と一緒に住んで、ガタガタ揉めたくないという人のほうが、僕の実感としては多いような気がします。
50歳を過ぎていまだ独身の息子をもつ女性が、僕の知人にいます。あるとき、親子で一緒に住む気はないのか尋ねたところ、彼女は言下にそれを否定しました。
「そんなことをしたら、息子にいいように使われちゃうじゃない。ひとりのほうがよっぽど気楽でいいわ」
案外、親が同居したいといったらと悩んでいるのは子どもだけで、親のほうは齢を重ねている分、同居したら何が起こるかをちゃんとわかっていて、一緒に住むことにそれほどこだわっていないのかもしれません。
親との同居問題より、自分の妻と、これから先の人生をどうやって生きていくかのほうが大変じゃないかな、などと思います。
(山口雅之=構成 若杉憲司=撮影)