国際NGO、トランス・ペアレンシー・インターナショナルが毎年発表している「腐敗認識指数」(順位が低いほど腐敗度が高い)の2019年版では、中国は180カ国中80位という腐敗度の高い国だ(日本20位、米国23位)。政府や共産党の幹部やその親族がさまざまな利権を握り、地方幹部の不正も多く、民族的にもルールに頓着せず、生き馬の目を抜いて金を手にする人間が勝ち組とされる文化があるためだと思われる。
中国企業のカラ売りで知られるマディ・ウォーターズの創業者でCIO(Chief Investment Officer)のカーソン・ブロックは「中国では嘘をつかれていることが前提だ」と述べる。
なぜ中国企業の不正が海外でバレるのか
中国企業の不正会計が発覚するのは、たいていがカラ売りファンドによる売り推奨がきっかけで、舞台は米国など海外がほとんどだ。これは、カラ売りをするには、会社が証券取引所に上場しており、株を借りられることが前提になるためだが、中国ではカラ売りがしばしば禁止され、貸株制度も未発達という事情がある。そのためカラ売りファンドは、米国、香港、シンガポールなどの市場に上場している中国企業をターゲットにする。
特に米国では、中国企業による裏口上場と米国の証券取引所の焦りという問題があった。
2000年代中頃から中国企業は、体力の弱った米国の上場企業を買収して上場ステータスを手に入れるリバース・テークオーバーで米国の証券市場に進出した。これを「裏口上場(back door listing)」と呼ぶ。先のチャイナ・メディア・エクスプレス、ユニバーサル・トラベル・グループ、アグフィード・インダストリーズの3社もすべて裏口上場である。
経営苦の証券取引所が目をつぶっている
その後、米国の証券取引所(特に、新興企業向け市場のナスダック)自体も中国企業の上場に積極的に手を貸した。米国では、上場しなくてもベンチャーキャピタルから容易に資金を調達できるようになり、エンロン事件を契機に設けられたサーベンス・オクスリー法が上場企業に厳格な財務内容の開示や内部統制を求めたため、上場企業数が1996年のピーク時の8090社から半分程度に減った。
証券取引所はこれに頭を悩ませ(上場企業が減れば、取引所に入ってくる手数料が減少する)、それに代わるものとして、中国の新興企業に目を付けた。上場基準を米国企業以上にゆるやかにし、実態不明の中国企業でも目をつぶって上場させた。
その結果、今やアリババ集団を筆頭に、百度(バイドゥ)やJD.com(京東商城)など、今年10月時点で217社の中国企業が米国の取引所に上場している。中国企業の不正会計は、ある意味で米国が種をまいたものだ。
ただし、中国企業の不正会計は米国だけの話ではなく、世界的なものだ。例えばシンガポール取引所(SGX)では、ここ10年程、毎年10社前後の中国企業が上場廃止になっている。