2011年にナスダックで上場廃止になった広告会社、チャイナ・メディア・エクスプレスは、プレスリリースで恒常的に現預金や売り上げの額を4.5倍から400倍に水増しし、顧客でもない大手多国籍企業2社を顧客であると宣伝していた。問題を指摘され、香港の会計事務所に調査が委託された際、中国人CEOは会計士に1000万人民元(約1億6400万円)の賄賂を渡して見逃してもらおうとした(会計士は拒否)。同社と中国人CEOは米国で詐欺等の有罪判決を受けた。

会計監査の調査を拒めば上場を禁じる法案が可決

2012年に廃業した中国の旅行会社、ユニバーサル・トラベル・グループ(ニューヨーク証券取引所上場)は、大量の顧客を獲得しているとしていたオンライン予約サイトがまったく機能せず、売り上げや利益を水増しした目論見書を使って米国で株式を発行し、集めた4100万ドルを34の正体不明の相手に不正に送金し、監査人に取引先であると伝えていたホテルの住所は公衆便所だった。SECは同社の元CEOと元役員の中国人2人を詐欺の容疑で告発した。

2013年に倒産した、中国で家畜用飼料と豚を生産していたアグフィード・インダストリーズ(ナスダック上場)は、本物と投資家用の二重帳簿を作成して、豚の販売数をごまかして売り上げを2億3900万ドル水増しし、それが発覚したとき、それらの豚は死んだのだと嘘の説明をした。SECは同社を不正会計で告発し、同社は1800万ドルを払ってSECと和解した。

中国人民元紙幣
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こうした状況に業を煮やしたSECは、2018年に米国に上場している中国企業に注意するよう投資家に呼びかけた。また今年、米上下両院が中国企業を念頭に、米当局による会計監査の調査を3年連続で受け入れない企業に上場を禁じる法案をそれぞれ全会一致で可決し、トランプ大統領が署名するところである。

「中国では嘘をつかれていることが前提だ」

中国企業で不正会計が頻発するのは、腐敗した土壌があるからだ。

日本公認会計士協会の「上場会社等における会計不正の動向(2020年度版)」によると、2016年3月期から2020年3月期までの間に、日本企業の海外子会社で発生した不正会計のうち、実に51.4%が中国におけるものだったという(中国以外のアジア24.3%、北米・南米10.8%、欧州8.1%、オセアニア2.7%、その他2.7%)。

筆者は2年前に取材で上海を訪れたが、地下鉄上海駅の地上出入口のところで何人ものブローカーが「ファーピャオ、ファーピャオ(領収証、領収証)」と叫んで、公然と領収証の売買をやっているのに驚かされた。