「不安」を「○○」と言いかえるだけで実力3割増し
興味深いことに、脳はリラックス状態以上に興奮状態にあるほうが、ポジティブな状態だということが判明しています。
ブルックスは、不安な状態からリラックスした状態に落ち着かせるよりも、不安な状態から興奮状態に移行したほうが望ましいと唱えています。テコの原理でたとえるなら、不安という支点があった場合、力点はリラックスモードではなく興奮状態にしたほうが、より強い力を発揮できるというわけです。
実験では100人以上の被験者に対して、見知らぬ人の前で歌わせたり、ビデオカメラの前でスピーチをさせたり、計算問題を解かせたりということを行いました。その際、次の3つのグループでパフォーマンスにどのような差が出るかを調べました。
グループ1 実験前に「興奮している!」と声に出したグループ
グループ2 実験前に「不安だ!」と声に出したグループ
グループ3 実験前に何も言わなかったグループ
グループ2 実験前に「不安だ!」と声に出したグループ
グループ3 実験前に何も言わなかったグループ
すると、いずれの実験課題でも、実験前に「興奮している!」と述べた被験者はいいパフォーマンスを見せたのです。
たとえば、ピッチやリズムなどで歌の正確度を見る実験では、「私は不安だ!」と声に出して述べた人は52.98パーセント、「私は興奮している!」と言った人は80.52パーセント、何も言わなかった人は69.52パーセントという違いが出ました。
不安とはエンジンがかかっている状態である
この研究のポイントは、「不安」を「興奮」と捉え直すことです。
興奮はパフォーマンスを向上させるもので、いわば、エンジンがかかっている状態。一方、落ち着くということは、エンジンが休んでいる状態です。ですから、ドキドキしているのはいい状態なのです。
大きな舞台に臨むときは無理にリラックスさせるよりも、「わくわくしていこう」とか、「興奮しよう」と自らを奮い立たせたほうが効果的なのはこういうわけなのです。