感染症対策で、いまやマスクは必需品だ。口腔外科医の宮本日出氏は「ただしマスクのつけ過ぎは、さまざまな肌トラブルの原因になる。正しい対処法を知ってほしい」という——。
「摩擦」「蒸れ」「乾燥」でボロボロになる肌
マスクをつけているとウイルスからだけでなく、肌も守ってくれるイメージがあります。しかし実際には、長時間の装着で、肌荒れやニキビなどのトラブルに悩まされている人が増加しています。
マスクによる肌荒れの3大原因は「摩擦」「蒸れ」「乾燥」です。
取り外したり、ズレを直したり、会話をするたびに、マスクと肌がこすれます。これが積み重なると、肌の角質層がダメージを受け肌が弱くなります。つまり摩擦により、肌が荒れてしまうのです。
またマスクの中は吐く息が充満し、湿度と温度が高くなりがちです。この蒸れた状態は、雑菌が繁殖しやすい環境です。悪玉菌の増殖により、肌のバリア機能が低下します。
そして、マスクを外すと、皮膚の表面の湿気が一気に蒸発します。この時に肌の水分も一緒に蒸散します。これにより肌は乾燥し、カサカサになってしまいます。
デリケートな唇はもっとも悲惨な状態に
唇は、角質層という皮膚表面のバリア層が薄いため、とてもデリケートな部位です。皮膚と粘膜の間の構造といえます。唇が赤いのは、内部の血液が透けて見えるためで、それだけ表面の皮は薄いのです(実は、われわれ歯科医師は唇の色で、患者さんの健康状態や精神状態を判別しています)。
通常の肌は、皮脂腺から出る皮脂と汗腺から出る汗が混ざり、天然の皮膚保護膜(皮脂膜)で守られています。一方、唇は皮膚の蒸散を防ぐ脂を出す組織(皮脂腺)が少なく、水分を出す組織(汗腺)もありません。つまり唇は皮脂膜がないのです。このため唇は、内部の水分が蒸発しやすく、肌の5倍ものスピードで乾燥してしまいます。
つまりマスクをすると、「摩擦」「蒸れ」「乾燥」が起こり、真っ先に唇がカサカサに荒れてしまうのです。そして、唇の皮がポロポロむける状態になります。これは「硬化剥離(こうかはくり)」という唇特有の現象です。