昨年冬、日本国内で1枚100円を切るセーターが発売されたが、これなどは人民元が安いからこそ実現できた値付けだ。今後、人民元高が進めば、メード・イン・チャイナといえども、これまでのように安い値段で販売するのが難しくなる。この手の企業にとっては、切り上げは業績悪化懸念につながるだろう。

また、「人民元相場の弾力化」を、「人民元の切り上げ」とイコールに捉える向きも多いが、弾力化によって変動幅が広がれば、逆に人民元安が進む可能性も否定できない。

中国での売り上げが大きなウエートを占める建設機械大手の日立建機は、人民元の為替予約を拡充し、これまでの「3割ヘッジ」から「5割ヘッジ」に引き上げた。

同社の場合は、まずキーコンポーネント(基幹部品)を日本から中国に輸出。中国の現地法人がこれを組み立て、販売している。

今後、切り上げによって人民元が円に対して高くなれば為替差益を得ることができるが、逆に人民元安という局面になれば、為替差損を被ることになる。その対応として、5割ヘッジを行うのだという。実際、この夏の超円高で、元の対日本円レートはむしろ安くなっている。

13億人の人口を有し、年度内にもGDPが日本を追い抜くと見られる経済大国だけに、日本企業の多くが、中国を戦略拠点と見なしている。

将来、変動相場制に移行する可能性も含め、弾力化が行われた人民元と、どう付き合っていくのかによって、日本企業の業績の明暗は大きく分かれることになりそうだ。