弾力化発表で、対ドルでは上昇

上海万博に沸く中国の通貨である人民元が、切り上げに向けて3年ぶりに動き出した。

つい5年ほど前の人民元は、米ドルに対して完全な固定相場制が取られていた。当時、人民元の対ドルレートは、1ドル=8.27元。経済の外部環境がいかに変わろうとも中国政府によって同じレートが適用され続けてきた。

対ドルで人民元は上昇したが、対円では下落基調に
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対ドルで人民元は上昇したが、対円では下落基調に

しかし、中国が世界の工場として経済力を高め、世界中に中国製品がどんどん輸出されるようになると、米国をはじめ、中国製品を大量に輸入している国の政府から、「アンフェアだ」という声が上がるようになってきた。

1ドル=8.27元という為替レートは、中国政府が自国の輸出を促進させるため、意図的に安い水準で固定していると受け止められたのだ。

そんな状況の中で、2005年7月から中国政府は人民元の水準を段階的に切り上げ、08年6月には1ドル=6.8元まで上昇していた。

しかし、ここまで切り上げられたところでリーマンショックが起こり、経済への混乱を防ぐため、政府は再び1ドル=6.8元で元を固定。

その後も切り上げへの圧力は強まり、G20首脳会議などでの批判をかわすため、今年の6月、人民元の弾力化を発表。その後、左のチャートのように、対米ドルでの元相場は大きく上昇している。

むろん、今もって完全変動相場制は取られていない。中国の中央銀行にあたる中国人民銀行は、「急激な切り上げは行わない」との見解を示している。が、かつての円と同じくゆっくりと上昇に向かうのではないかと考えられる。