おせち購入予定の人が約16%増えた
2020年も残すところあと2カ月足らず。家族や親せき、仲間同士で「正月、どうする?」という話題が出てくるころだ。
だが言うに及ばず、今年は違う。新型コロナ感染拡大防止のため「親が高齢なので、実家に帰省するのは辞めにした」(50代女性・自営業)、「年越しのカウントダウンは、毎年、親戚のいる海外で迎えていたが諦めた」(40代男性・会社員)などと、新たな過ごし方を決めた人は多い。
動きは早くから出ていた。8月に松屋銀座がウェブで行った「お正月の過ごし方・おせちに関する意識調査」では、「元日を自宅で過ごす人」は昨年から約1割増の73%。「おせちを購入する」と答えた人は約16%も増えた(2020年8月17~20日、公式メールマガジン会員約3万1000人対象、1440人回答・平均年齢51.6才)。我慢、我慢の日々を乗り越え、「正月くらいは、ゆっくりおいしい物でも食べたい」という心理が高まっていた様子がうかがえる。
そして今、予想どおりおせち商戦は、ヒートアップしている。だが、例年と同じように百貨店や有名ホテル、高級料亭の豪華おせちばかりに人気が集中しているわけではないようだ。「近所で買い物を済ませたい」「一度にまとめて買いたい」という新たな買い物ニーズが生まれ、コンビニおせちの注目度が高まっているのだ。
すでに「個食化」が進んでいた
実際、セブン-イレブン・ジャパン(以下セブン)、ファミリーマート(以下ファミマ)、ローソンの大手3社に取材してみると、年末年始向け商品の予約は「好調だ」という。生活スタイルの変化を察知、各社とも昨年とラインナップを変えたことが奏功している。各社のおせち戦略を見ていきたい。
もともと近年、市販のおせちには、ある変化があったという。
「スーパーや百貨店で売り出されるおせちは世帯人数の減少を受けて、食べ切り・小容量といった『個食化』が加速しています」
と話すのは、セブン-イレブン・ジャパン商品本部、FF・惣菜部チーフマーチャンダイザーの安藤貴将さんだ。市場のおせちのお重の段数を確認しても、「一段重の構成比が上昇している」という。
加えて2021年の年始は、感染予防で帰省や大勢の集まりを控える動きがあると見て、安藤さんは「さまざまな過ごし方に合わせたおせちの品ぞろえを意識した」そうだ。具体的には、1人前、1~2人前、2~3人前、3~4人前と、人数に合わせて楽しめるさまざまなおせちを取りそろえた。
こうして変化に応じたアイデアが詰まったセブンのおせちだが、例年人気ナンバー1は「寿おせち三段重」(1万8360円・店頭受け取り)。3~4人前で、おせちに欠かせない伝統的な食材が詰まったリピーターの多い定番だ。
2021年版は、比較的手頃な価格はそのままで「人気の高いローストビーフや高級なアワビを3年ぶりに使用した」とよりスペシャル感をアップさせ「おいしいものを食べたい」ニーズに応えた工夫が見える。