つじつまあわせは、疲労度ではなく数値で判断する

そして、この「つじつま」あわせにぴったりなのが運動である。

例えば、目安の摂取カロリーよりも500kcalほど多く食べてしまった日があるとしよう。そんな日は夜か翌日、私は1時間ゆっくり走り、その分のカロリーを消費するようにしている。時間がとれなければ30分ずつ、翌日と翌々日に走るでもよい。

ただし、運動をして「疲れた」と感じても、カロリー消費が多いとは限らない。例えばウエイトトレーニングのような筋トレは、筋肉量を増やすことで長期的に基礎代謝を上げ、消費エネルギーを増やすが、1回の筋トレのエネルギー消費量はジョギングのような有酸素運動と比較するとかなり少ない。筋トレで「やった感」を覚えてラーメンを食べ続けていれば、おのずと太るわけだ。

そこで役に立つのがアクティビティトラッカー、身体活動量計だ。アクティビティトラッカーでは、心拍数やGPSによる走行ペースなどから「その運動でどのくらいのエネルギーを消費したか」がわかる。

それだけでなく、運動以外の生活活動(例えば近くのコンビニに行くために消費したカロリー)や、基礎代謝も推計することができる。『Fitbit』や『Garmin』などが人気メーカーだ。これらのメーカーであれば、最低限の機能があればいいなら、1万円前後~購入できて安価。また、Apple Watchを持っている人がいれば、同様の機能が搭載されている。

オーバーしたカロリーをダイエット管理アプリにより定量的に把握し、その日や翌日、翌々日までに(これも定量的に)食事や運動によりつじつまを合わせてやれば、人は太ることはない。ここで必要なのは客観性であり、「がんばった」といった主観的な印象に左右されないようにしたいところだ。

もう一点、重要なのは結果を測定すること。その役目を担うガジェットが体組成計になる。

まさに「古くて新しい」存在で、最近のモデルはスマホと連動、計測データを通信で専用アプリに記録し、体重や体脂肪率の数値を表やグラフにしてくれる。これも『TANITA』や『OMRON』など大手メーカーの、目安として2万円以上のモデルであれば標準搭載だ。こうしたガジェットを駆使すれば、かねてから肥満症の認知行動療法――患者の思考や行動に焦点を絞ることによって改善を図る心理療法として効果を認められてきた「レコーディングダイエット(記録をつけるダイエット)」も、より継続しやすくなる。

肥満者の「思考のクセ」を脱却する方法

仮説と検証はどんなプロジェクトにも必要なプロセスだ。しかし、ことダイエットにおいては、往々にしてこの「検証」というプロセスが抜け落ちてしまっている。

朽木誠一郎『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)
朽木誠一郎『医療記者のダイエット 最新科学を武器に40キロやせた』(KADOKAWA)

ダイエットはなかなかに難しい。スムーズにいかないことも多々あるからこそ、自分を「客観的に」みることを意識的にしろ無意識的にしろ、避けてしまうこともあるだろう。そして、自分にできる範囲で努力をしようとする。

努力は大切なことだが、本末転倒だと私が感じるのは、例に挙げたような「ラーメンの代わりにサンドイッチを二つ食べる」ような、非合理な努力をしてしまうことだ。であれば、望み通りラーメンを食べた上で、前後や翌日の食事で調整、あるいは運動をした方が、よほどストレスがないではないか。

肥満者を対象にした研究では、肥満者は「時間選好率が高い」すなわち「未来の利益」よりも「目先の利益」を優先してしまう傾向があることがわかっている。これは合理的に考えることを妨げる肥満者のクセとも言える。

どうせするなら、合理的な努力により効果を得よう。そのために必要なツールが手に入りやすい今は、やせやすい時代とも言えるのだから。

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