「30代になったら、今のような働き方はできないと思う」。IT企業のトップ営業Cさん(28歳、年収700万円)はこう漏らす。高い業績を挙げている女性にとってすら、総合職は「太く短い」働き方。6割の女性が出世をためらうはずだ(図6)。管理職になると意外に幸福度は高いが(図7)、体力、ストレス、マネジメントへの自信のなさや社内政治に巻き込まれる危惧など、手前のハードルはたくさんある。
ごく少数のバリキャリ女性しか生き残れなかった40代の男女雇用均等法第一世代を反面教師としてか、ロスジェネ世代の多くは堅実な選択をする。
「細く長く働きたい。年収が倍になっても責任が重くて続かないと思うから総合職は嫌です。今の職掌なら夫の転勤にも対応してくれますし……」
結婚を間近に控えた大手金融の一般職Dさん(29歳、年収400万円)は言う。今や大手企業の一般職は、かつての「お気楽な腰掛け」ではなく、「女子一生の仕事」なのだ。調査でも、「定年までこのまま働きたい」と答えた人は管理職の次に一般職が多かった。不況で凍結されていた一般職採用を、ミニバブルの際に「事務職のプロ」として再開した大手企業が増えたこともあり、一流大学を含む、多くの女子大生から注目を集めている。リクルートの2009年「就職ブランド調査」によれば、女子大生の志望職掌は、一般職と総合職と半々。男子でも約3割が一般職志望という結果になった。
さらに最近増えているのが「エリア(特定)総合職」という職掌である。総合職だが転居を伴う転勤はなしで昇給や昇進に制限があるというものだ。
「一般職で入社後、試験を受けてエリア総合職になりましたが、給料はそれほど変わらず、責任だけが重くなった。後輩たちは私を見て『ああはなりたくない』と思っているみたいです」
中堅商社のエリア総合職Eさん(30歳、年収460万円)は、もうこれ以上の昇進を望まないと語る。正式な総合職になっても給与は600万円ほどで激務に見合うとは思えない。社内結婚のEさんは結婚時「仕事を辞めたい」と言ったが、夫に「即却下」された。家計に対する女性の責任が確実に重くなっている今、安定した環境で細く長く働きたいという人が増えるのも無理はないだろう。