30歳過ぎれば仕事が減る……将来に備えた人脈作り

さて、ここまではなんとなく読者のみなさんも「そんなことはわかっているよ」「多分そうなんだろうと思っていたよ」という感じではないだろうか。

競争が激しい女子アナの世界で、仕事を確保するために男性上司たちからの無茶ぶりに女子アナたちは「営業ツール」として応じていることは、業界を知らないみなさんにも想定内だろうと思われる。

だが私が先ほど「そうしたオッサンからの誘いをむしろ喜んで受ける女子アナたち自身のメンタリティがあるのでは」と書いた理由は実はもうひとつある。

それは「女子アナたちがむしろ積極的にそうした飲み会の席を、自分たちの人脈作りの場として積極的に利用しているのではないか」ということだ。こちらもどういうことか詳しく説明しよう。

年齢を重ねて失われるものを補う

私はかつて民放キー局で局員をしていた。私のような「なんの力もない一般の局員」と「アナウンサーのような特別な局員」の間にどのような違いがあるか。一番大きなものは「見えている世界や景色が全然違う」ということだ。

私は、確かに局員として、それなりに良いお給料をもらい、それなりの良い待遇をいただいていた。だが「見えている世界」は普通のサラリーマンの方々とほぼ同じだった。普通のサラリーマンなのだから当たり前である。普通に通勤をし、仕事が終われば同僚や友人とそのへんの居酒屋で酒を飲み、普通に家に帰る。きわめてフツーの人なのだ。

しかし、アナウンサーは「普通の人とは見えている世界や景色が違う」のだ。芸能人やセレブが見ている世界や景色に近いと言えば分かりやすいだろうか。

会社員でありながら出演者でもあるという立場から、交友関係にも芸能人や有力者がおのずと増える。呼ばれる席も「特別な人限定」でクローズドな会食が多くなり、「社交界」的な場に顔を出す機会も増える。それが彼女たちの普通の局員とは違う特別さである。

そんな「普通の人とは見えている世界や景色が違う」という自分たちの特別さを、言ってみれば一層強化してくれるのが、「局内有力者から同席を求められる飲みの席」なのだ。

女子アナの「過酷なサバイバル」には頼れる柱が不可欠

局内有力者がビジネスを有利に運ぶために同席を求めるような場であるから、そこに来るのはそんじょそこらのオッサンや一般男子ではない。それなりの地位にある社会的成功者がそこには来るわけだ。

むしろそうした席に積極的に参加し、お知り合いになり特別な人脈を作ることは、言ってみれば女子アナたちを一層強化し、その実力を高めることに直結する。

言葉の端々で「私はこんな有力者と面識がある」といったことを匂わせてくるアナウンサーはたくさんいた。そうした話を聞くたびに「へえー、俺とはずいぶん住んでいる社会が違うのだな」と感心させられたものだ。