10月1日からビール類の税率が改定され、第三のビールは10円近く値上がりした。安さが売りの商品への「狙い撃ち増税」だが、主要メーカーはまったくめげていない。ジャーナリストの村上敬氏がアサヒとサッポロの2社に真意を聞いた——。
サッポロビールマーケティング本部長の野瀬裕之氏
撮影=プレジデントオンライン編集部
サッポロビールマーケティング本部長の野瀬裕之氏

安さが売りの「新ジャンル」は値上げに

今年10月1日、酒税新税額の適用が始まった。これまで350ml缶1本あたりの税額はビールが77.0円、発泡酒46.99円、新ジャンルは28.0円だった。新税額は、ビールが70.0円で7円の値下げ、発泡酒は据え置き、新ジャンル(いわゆる第三のビール)は37.8円で9.8円の値上げになった。

改正前、ビールと新ジャンルの税額差は49.0円だった。この税額差が新ジャンルの人気を押し上げていたが、今回の改正で税額差は32.2円に縮まった。ビール会社が苦労して開発してきた新ジャンルの価格優位性が弱まるが、取材した2社は思いのほかめげていない。その真意を聞いてみた。

そもそもなぜ3種類もあるのか

そもそもビールの他に発泡酒、新ジャンルがあり、それぞれになぜ税額が異なるのかを知らない人もいるだろう。ビール類の複雑さを理解するには、酒税の歴史を振り返る必要がある。

酒税の税額は、アルコール依存症を防ぐため、アルコール度数が高いほど税額が高く設定される傾向がある。その例外の一つがビールだ。ビールは他のお酒に比べてアルコール度数は低めだが、その割に税額が高い。海外との比較でも、改正前はアメリカの約10倍、ドイツの約20倍という高さだった。

戦後のビール史は、増税の歴史だった。昭和50年代には4回の増税が行われ、1989年の消費税導入時に大びん1本当たり10円の調整減税が行われたものの、94年にはふたたび10円近い増税に。この税負担を回避するため、ビール会社は新たに麦芽比率の低いお酒を開発した。それが酒税上ビールに分類されない「発泡酒」だ。先駆けは94年のサントリー「ホップス」で、98年キリン「麒麟淡麗<生>」の大ヒットで発泡酒市場は一気に拡大した。

狙い撃ちの増税は繰り返されてきたが…

成長する発泡酒市場に冷水を浴びせるように、03年に発泡酒の税額が上がった。サッポロが発泡酒とも異なる新ジャンルで「ドラフトワン」を発売したのは、この増税の4カ月後。サッポロビールのマーケティング本部長で、当時はドラフトワンの商品開発担当グループリーダーを務めていた野瀬裕之氏が経緯を振り返る。

「社内に『発泡酒よりさらに安いものを出すのは、お客様に安かろう、悪かろうと思われるのでは?』という声があったことは事実です。しかしエビスや黒ラベルの商品設計とは異なっており、また発泡酒の次にはお客様がさらにスッキリしたものを求めているという確信があった。カニバリズム(利益の食い合い)が起きたとしても、その期待に応えてトータルで支持いただければよいと考えました」