lalavieのオイルインローション
撮影=小川 聡

プレミアムブランドが、社員たちを変える

プレミアムブランドの開発は、社長直轄プロジェクトとか、特別プロジェクトなどという扱いにはせず、商品開発担当の3人が通常業務としてスタートした。はじまりは、やはり「顧客」を知ることからだった。お客様は何を求めているのか。いくつも立てた仮説の中から開発チームがつくりあげたのは、オイル特有の保湿効果は保ちながらも、サラリとした使用感で、「オイル系の製品を使いたいけど、ベタつきが苦手」というお客様におすすめしたいものだった。

潜在的なニーズに着目しているが、コンセプチュアルすぎず、私たちのできること、強みをミックスしたプロダクトアウト型の商品だ。背伸びではなく、持っている卓越性で勝負してくれた。ブランド名は、lalalala……と歌いたくなるような生活(vie)という意味を込めて、lalavie(ララヴィ)と名づけた。着手から発売までは、2年を費やした。

ララヴィの存在は、社員に大きな変化をもたらした。私の指示ではなく、現場主導でつくりあげたブランドだけに、その熱量はさまざまな部署にまで伝播している。たとえば、日常の会話の中に「これって、お客さん誰なの?」というセリフが入ってくる。会議でも「それって、本当にうちの強みなの?」「他社さんでもできることだよ」というやりとりが行われる。以前はリクエスト通りにモノを作っていたが、今は価値を作ろうとしているのだと思う。

ODMの営業場面でも思わぬ効果が出てきた。「この技術とこの技術を使って、こんなモノができたんです」とララヴィをお持ちすると、クライアントの反応がまったく違う。「このままちょうだいよ!」と言われることもある。

使命をベースにした会社にしたい

決めていることが1つある。ララヴィは、絶対に結果を急がない。ゆっくり、PR、ブランディングをやっていく。ララヴィのマーケティングチームをつくり、現在は6人がそれにあたっている。そのかいもあって、販路は着実に広がっている。

オンラインショップだけでなく、阪急梅田さんなどの百貨店さんから声をかけてもらい、ポップアップストアを出させていただけるようになった。そして今夏、有楽町マルイさんに常設のストアを、9月からは東急プラザ表参道原宿店さんで1年半のポップアップストアを出させていただいている。

当社はどこへ向かうのか。社員をどう導くのか。それを考えたとき、会社の事業目的を変えるべきだと判断した。「1人ひとりのお客様の心を豊かに、笑顔にすることを使命とする。それは、お客様がもっと自分を好きになるお手伝い。」とした。この使命を、どう現場に浸透させられるか。あと数年はかかるだろうが、使命を自分たちの背骨にして仕事ができるようになれば、もし私が退いて誰がトップになってもぶれない会社になるだろう。

いい口グセがもっともっと社内に広がるよう、会社の新しい文化をつくっていくのが、私のミッションだ。

(構成=梅澤 聡 )