あらゆるビジネスで前例が通じなくなっている。変化が連続し、不確実な時代に、結果を残せる人、残せない人の差は何か。1店舗あたりの平均月商を200万円から400万円以上に引き上げて安売り店のイメージを覆し、8年連続赤字の窮地からメガネスーパーをV字回復させた星崎尚彦社長に聞いた——。

*「崎」は正しくは、「﨑」です。

できる人は、城を取ってくる。

私は歴史好きで、あらゆる場面で、戦国時代に置き換えて考える。店長に求めるものは、たった1つ。「城」を取ってくることだ。

店長にとっての「城」とは、利益にほかならない。城が取れる店長は、もれなく数字への意識が高い。数字への意識をどの程度持っているかは、初対面でも10分も話せばわかる。トップライン(売り上げ)、ボトムライン(最終損益)が言えるのはあたりまえで、直近の人件費はいくらか、家賃は現在の相場に見合っているか、EBITDAはいくらか、このくらいはパッと言えてほしい。

昨日の生データを持ってくる人を信用する。

月初めのミーティングでは、システムの関係で、前月の数字が締まらないことがある。ならば、30日までの数字に手計算で31日の分を乗せた最新データを持ってきてもらいたい。小売業の戦場は、日々戦局が変わる。昨日までの勝因が、今日の勝因とは限らない。2日前、3日前の数字を基にした議論では心もとない。最新の数字を軽んじる、緊張感の足りない人とは、話す気がしないとハッキリ伝えている。

プレゼンで、過去データから資料を作り込んでくる人がいる。私は、そんなものは求めていない。上がった、下がったという話ではなく、現場にいる人間として、あなたが今何を感じ、どういう仮説を導き出したのか、それを聞かせてもらいたい。1週間前のデータを吟味するくらいなら、昨日の生データを持ってきて、「社長、どこを見たらいいでしょうか?」と率直に言ってくる社員のほうが、よほど信用できる。

できる人は、過去にとらわれない。

コロナ禍で、城を取れる人のもう1つの資質がハッキリした。それは、ゼロベースで考え、すぐに行動できることだ。

コロナウイルスと闘いながらの営業となり、今までの常識が通用しない。かつての非常識が有効な打ち手になることもある。たとえば、路面店は朝10時半から21時くらいまで、およそ半日営業しているのが当たり前だった。それを8時間勤務に1時間の休憩を加えた、9時間営業にした。「ワンオペ」ではなく、複数のスタッフが同時に出勤し、休憩はずらしてとり、同時に退勤する。残業がほぼ生じない。

ふたを開ければ、2020年8月の売り上げ前期比は、眼鏡、コンタクト、補聴器をまとめた数字で101.8%と伸びた。営業時間は2割以上減らしたのに、売り上げは去年を超えた。人件費は、残業代も含めて5000万円も減った。

「会社帰りのお客様をつかまえられない」とか、「シニアの方は朝早いほうがいい」という、もっともらしい理由で営業時間を維持してきたが、この結果だ。どうしても来店時間を指定されたいお客様は、予約システムを使ってくださる。これまでのやり方を踏襲し、営業時間を据え置いたら、傷が広がっただろう。困難な戦況で、戦をコントロールするには、過去にとらわれず、ゼロベースで考え、ためらわずに実行する力、その力を持った人が必要なのだ。

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