星崎尚彦社長
撮影=黒坂明美

話が早く、便利なベテラン社員も危ない。

ここまでダメなら、わかりやすいが、何でも即答できてしまう人も危ない。「待ってました、その質問」とばかりにスラスラ考えを述べる。初めから、自分の答えを持っている。そんな様子を見て、私はこう思う。

「この人、新しいことにチャレンジしていないのかな」

うちでいえば、経験豊富なベテラン店長に多いタイプだ。何でも知っていて、話が早いから、エリアマネジャーあたりから便利がられ、重用されてきた。過去に事例があることは卒なくこなすが、ゼロベースで考え、行動することはできない。守りに強いが、攻めないから、数字が爆発しない。昨対比100%前後を行ったり来たりする。

私が社長になってから、城を取れないベテラン店長には、副店長に降りてもらっている。今、最後の入れ替えをしているところだ。もちろん、彼らはまだまだ活躍できる。いい接客をし、いい検査をし、お客様にも好かれている。店長としてはダメでも、販売員としては非常に優秀だからだ。

人は変われるか——。

城を取れる人と、取れない人、どこが違うか。一言で言ってしまえば「能力」だと思う。能力は、その人が持っている先天的なものと、会社がその人に与えた教育の掛け算で決まる。私にできることは後者だ。若いときに、思考を深堀りしてあげると、勘のいい人は「しまった!」と気づき、考え方をあらためてくれる。一度「しまった!」と気づいた人は、ミスをしなくなる。私が社員と話すとき、「それはなぜ?」と、バカみたいに何度も、しつこくたずねるのは、彼らの考えを深め、「しまった」と気づいてもらうためにほかならない。

人は変われるか。その問いに、私はこう答えたい。絶対に変われる。どうすれば、結果を出せない人を変えられるのか、機会を改めて話したい。

(構成=内山賢一)