星崎尚彦社長
撮影=黒坂明美

頭から決め込む人の店は、進化しない。

一方で、前例踏襲で生き延びてきた人たちは、その座から追われることになるだろう。そういった人にはいくつかの特徴がある。たとえば、頭から決め込んでしまうことだ。

私が「うちも館(商業施設のことを館と呼んでいる)のチラシに載せてもらえないの?」と提案すると、「難しいと思います。前に聞いたとき、ダメと言われましたから」と答えた社員がいた。「それは、いつのこと?」と聞くと、一昨年だという。館の館長が変わっているかもしれないじゃないか。PRの責任者が変わっているかもしれないじゃないか。過去の、たった1回の失敗で、あっさりとあきらめてしまったのか――。

私が「子ども用のフレームを置いてみたら?」と提案すると、「うちの店は、子どもは来ないんで」と答えた社員がいた。子ども用のフレームが売っていないのだから、子ども連れが来店しないに決まっている。店前を子ども連れのお客様が通るのか、通らないのかという視点で見るべきじゃない。そのうえで、できることを検討すべきじゃないか。なぜ「子どもは来ない」と言い切ってしまうのか——。

過去の体験、世の中の常識にとらわれていては、新しい手を打てない。こういった人が率いる店は、進化しない。

やらないで逃げる人は、一番ダメだ。

何かと、ひとごとのように言う社員がいる。これはダメだ。会議で、「コロナのせいで、お客様が減っています」と報告してくる。私は、めちゃくちゃ怒る。そんなことは、会議を開かなくてもわかっている。理由を前面に出すのではなく、その中でどう戦い、ライバルに比べて君は勝ったのか、負けたのか、次は勝てるのか、勝てないのか、そこを聞かせてもらいたい。売り上げが7掛けになっているのに、「しょうがない」というスタンスで来られると、非常に残念だ。

しかたなくはない。コロナを理由にあなたの給料を下げていいのか、コロナを理由に家賃をゼロにしてもらえるのか(ありがたくも、協力してくださったオーナー様には感謝したい)。コロナ禍だからといって、売り上げや利益を下げていいわけがない。

うまい言い訳をして逃げる社員は、一番ダメだ。「密になるから1組しか入れてない」と言う。店のスペースを見たら、2組入れても3組入れても、密にならない。もっともらしい理由をつけて、逃げる。やらないための理由を巧みにつくる。言い訳をしても、その背景に思考がないから、どうにも浅い。浅い答弁で過去の上司が納得してきたから、浅い答弁をし続けているのだろう。