裏ワザ2 面談記録をマメにとる

突然の場合でも、「リストラ宣告だな」とピンときたら、とにかく記録をとり始めなければならない。そのために日ごろから、少なくともメモ帳と筆記用具は携行しておきたい。それにICレコーダーも必須ツールだ。

これによって相手は気勢をそがれ、これは一筋縄ではいかないと思うだろう。脅かし半分の下手な発言もしてこなくなるのが普通だ。記録はいろいろなところで相談に乗ってもらう場合も利用でき、何よりも裁判などになったときは力強い武器になる。やれば導入から圧倒的優位に事を進められる。

この辺は相手もよく知っているので、そういったものの使用を止めさせたり牽制したりする。これは100%近くあると考えたほうがよいだろう。

「なにそれは。そんなんじゃあ、話せる事も話せないでしょうが。そういうことされるとお互いの信頼関係も崩れてしまうので遠慮してよ」

何を言われても、その場でノートを広げ、「2020年10月5日、月曜日、今10時11分。第一会議室、面談者は山本和夫部長。部長が『それは遠慮してください』と発言」とドンドン大きな字で書けばよい。ICレコーダーも前に置いて「録音スタート」とスイッチオンすればよい。使うことはなんの問題もない。

激しく抗議されることも、その場の雰囲気もあるだろう。難しければICレコーダーは無理に使わなくてもよい。とり上げられたり、机の上にオフして置かされたりすることに備えて2台持ちが今や常識になっている。

馬の耳に念仏でほうっておけば、苦笑しながら黙認される場合も多い。こうなれば、まず初戦は大勝利でのスタートとなる。さらにノートパソコンを持ち込んで発言をいちいちインプットする輩も出てきている、と嘆く人事担当者もいるくらいだ。

「そうですよ、部長のおっしゃるとおりですよ。これはあくまで言った言わないの話になった場合の確認用です。駄目なら私はこれから一切無言で通します」

「金持ち喧嘩せず」の対応で既成事実を作ればよい。できるだけ細かく、要約しないでありのままの発言と様子を書く。相手側に、「こうですよね」と確認をとるのも高等戦術だ。

ある人は、録音された一部始終をそのつど聞いて「こんな事言われて、絶対負けない」と励みにしていると聞いたことがある。さまざまな使い方があるものだ。

ノートとICレコーダー
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裏ワザ3 とにかく時間を稼ぐ

各部署や人事にはリストラ目標人員があり、いつまでにという時期も決まっている。よって、トラブルが起きそうだとか時間がかかりそうな人は後回しになりがちだ。ここが狙い目で、そうこうする内に台風一過。あれはなんだったのかということがしばしばある。景気が回復して急にリストラが中止になったり、希望退職の応募人員が募集枠を超えたり、上司の異動でリストラ候補から外されたり……。だからとにかく時間を稼ぐのだ。

普通、面談で設けている「週1回以内」「1回が長くて1時間」の基準をこの際活用するのだ。そのやり方として、

★2回目以降の面談では、メモや録音したものを基に前回の詳細な問答記録を作って面談者に渡す。そして一つ一つ読み上げて確認。違っていれば修正し、最後にサインさせる。

イチャモンをつけられたら、「大事な打ち合わせだから、キチンと議事録を作り、互いに確認するのが当然でしょう」と涼しい顔で受け流せばよい。

★家族と示し合わせて面談中に携帯電話をかけさせる。電話応答したあと、溜息をつきながら「女房がうつになって」「子どもが不登校で」「母親が徘徊して」と家族のマイナス情報を面談者に伝える。面談中に何回も電話があれば、時間がかかるだけでなく本人の不安定さを印象付けられる。

★「お水いただけますか、薬飲む時間なので。ちょっと心臓の調子が悪くて医者からは早く手術するように勧められていまして。発作がいつ起きるかわからないのです」と語る。面談が中断し、面談者も勢いがそがれ、また無理押しできないという印象を与える。

★面談者の説明や説得の内容を細かく確認して質問する。また持論をとうとうと述べる。

「会社が収益悪化した原因なんですが、私が思うに……」

★事前の想定問答に基づき、ああ言えばこう言うスタイルで自分の考えに引き込んでいく。

★面談者が答えにくい質問をする。

「それは就業規則の何条何項に規定されているのか、今まで適用された事例はどうか」
「社長の経営責任について聞きたい。そもそも会社がこんな危機に陥ったのは○○事業に新規進出したせいではないか。どんな成算があったのか聞きたい」