アルコールは極めて低い濃度から運転に影響を与える

実は、低濃度のアルコールでも運転に影響を及ぼすということは、すでにさまざまな研究によって裏付けられている。

警察庁のWEBサイトには、『アルコールは“少量”でも脳の機能を麻痺させます!』という見出しと共に、注意が呼びかけられている。

アルコールには麻痺まひ作用があり、脳の働きを麻痺させます。一般に「酔う」とは、血中のアルコール濃度が高くなることにより、大脳皮質(理性や判断をつかさどる部分)の活動をコントロールしている大脳下部の「網様体」が麻痺した状態を言います

さすがに「脳の働きが麻痺する」と言われると、それだけでハンドルを握るのがこわくなる。

車のキーとビールジョッキ
写真=iStock.com/dusanpetkovic
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では、「麻痺」の度合いには、酒に強いか弱いか、という個人差は関係するのだろうか。その疑問についての答えはこうだ。

酒に弱いと言われる人だけではなく、酒に強いと言われる人でも、低濃度のアルコールで運転操作等に影響を及ぼすことが各種調査研究により明らかになっていますので、飲酒したら絶対に車両等を運転してはいけません!

なるほど、私自身が体験した一本橋走行実験で、「お酒には強い」と自負していた人たちがことごとく脱輪したのはそれが理由だったのだ。

酒に「強い人」も「弱い人」も影響は同じ

ちなみに、「酒に強い人」は、アセトアルデヒドという物質を分解できるので、少量の酒を飲んでも「自分は酔っていない」と認識する。しかし、身体の中に入ったアルコール濃度は、同じ量を飲んだ「酒に弱い人」と同じなので、その影響はほぼ同じだということだ。

また、厚生労働省の『生活習慣病予防のための健康情報サイト e-ヘルスネット』には、次のように明記されている。

個人差は認められるものの、アルコールは運転に必要な技術や行動に対して極めて低い血中濃度から影響を与え、血中濃度が高くなればその分影響も強くなることが知られています

図表1を見てほしい。これは、「e-ヘルスネット」のサイトに掲載されている「運転技能と、血中濃度と、飲酒量の目安」を示した表だ。