試しに、米国や日本に届いた「ナゾの種」の送り状写真を基に、送付元はどこか、筆者が改めて調べてみた。送り状記載の電話番号(+86‐17727553512)を手掛かりに調べたところ、香港と国境を接する深圳市にあるeコマースのベンダーから海外向け転送サービスを受けている会社の一つ、「泰嘉物流有限公司」であることが判明した。同社は、まとめて海外向け小形包装物を格安に転送するサービスを引き受け、日本でいうと、第3種郵便割引の代理引受のようなビジネスを行っている。そう考えると、送り状そのものはホンモノである可能性が極めて高い。

ただ、泰嘉物流の案内を読んでみたところ、送付禁制品の中に「動植物」とあるだけで、種子はリストされていないが、拡大解釈すべき制限品の一つと見るべきだろう。

日本農水省は「庭やプランターなどに植えないで」

送り元が誰かはともかく、日本でも「ナゾの種子」への水際対策が求められることとなったわけだが、その責を負っているのは、農林水産省の一部門である植物防疫所だ。目下の日本での影響について、以下にまとめてみた。

「謎の種子」日本での影響は(筆者まとめ)
・国内各社報道によると、神奈川県、愛知県などに到着例あり
・受取人の住所や氏名が第三者に盗用されている可能性あり
・内容物は「指輪」「アクセサリー」などと詐称
・農水省植物防疫所が任意で回収を実施

農水省植物防疫所のウェブサイトは8月4日、「海外から注文していない植物が郵送された場合は、植物防疫所にご相談ください」という題名で注意を勧告している。

「最近、注文をしていないのに海外から種子が郵便などで送られてくる事例があるようです。植物防疫法の規定により、植物防疫官による検査を受けなければ、種子などの植物は輸入ができません。輸入時の検査に合格した場合は、外装に合格のスタンプ(植物検査合格証印)が押されます。
(中略)なお、心当たりの無い種子が届いても、庭やプランターなどに植えないでください」

回収や分析はしないのか

以上のように、当たり障りのない書き方をしている。ましてアメリカのように「中国から来ている」と断定している口調はない。

ただ、残念なことに積極的に分析などの対応をするようには感じられず、「送料をご負担いただけるのであれば、最寄りの植物防疫所に送付してください。植物防疫所で廃棄処分いたします」と記載するにとどまる。

これが、在来植物に影響を与えるようなものだったらどうするのか、という懸念はもとより、人体そのものに影響しないという確証もない。国民を安心させるのに、積極的に回収するという態度を見せても良いと思うのだが。新型コロナが中国で問題化したころの、日本での消極的な対応に似ている……というのは言い過ぎだろうか。