「何の目的で?」3つの理由を考えてみた

送り元が分かったとしても、やはり「ナゾの種子」をめぐっては、どこの誰が何の目的に推し進めているのか、という疑問が残る。

いくつかのシナリオが考えられる。まとめると次のようになるが、3番目が最も深刻だろう。

1.ブラッシング詐欺の可能性

アメリカの媒体を引用する形で、日本語メディアでも「ブラッシング詐欺」の可能性を報じるところがある。「ブラッシング詐欺」とはオンライン詐欺の一種で、コストのかからない自社商品を勝手に送り付け、あたかもその人が書いたかのようにその人の名前を使ってネット上に良いレビューを書きこむというものだ。

2.危険性の強い植物が生えてくる

危険性が極めて強い植物が生えてきて、それを扱ったことで人体に重篤なダメージを与えることを期待するというシナリオ。未確認情報だが、樹液が目に入ると失明することもある「ジャイアント・ホグウィードの種子が送られてきた」という話もある。そのほか、放射性物質が混ざっているのでは、という憶測もあった(これまでに、具体的に検出された例はない)。

ただ、「中国から送られて来た種子を同じ植木鉢」にコケを一緒に植えたら、それだけが枯れてしまったという証言もあり、何が真実かはしばらく注視する必要があるだろう。

標的は自然豊かな“あの国”か?

3.送り先の国の植物、動物の生息域を狂わす

ある種の種子を発芽させ、繁殖させた結果、在来種の植物を排除し、動物の生息域を削ることにつながることを期待するシナリオ。自然遺産を多く抱える国にとって外来種の侵入は大きな脅威となる。

種子をはじめ、植物や肉類を含むさまざまな食べ物の流入を徹底的に拒んでいる有名な国といえば、オーストラリアが挙げられる。今回改めて在豪の友人に話を聞いたところ、「あらゆる到着郵便物をスキャンして徹底チェックしており、個人宅に種子が届くとは思えない」とした上で、「外来植物への警戒は、学校でもしっかり教えられる。受け取ったからといって植えたりは絶対しない」と国民の間に意識が浸透していることが伺える。

ある国で作物の収穫に支障が出るようなことになれば、たかが「数グラムの種子」が他国への攻撃に使える強力な武器にもなり得る、というわけだ。