【ITさん】似たような話もある。やはり夫婦ともに在宅勤務で、反抗期の高校生の息子がいる。夫婦関係もギクシャクしていて、結局3人とも自分の部屋に一日中籠もっている。しかも食事は作ってもそれぞれ自分の部屋で食べるのでリビングには誰もいない。光熱費もバカにならないと言っていた。

【建設さん】一方で在宅勤務が難しい社員から不満の声も上がっている。とくに営業や現場の部門は出社が多い。学校が休校で子供を預けられない社員には「防疫休暇」という公休を付与した。当時は感染拡大の時期で怖くて出社したくないという社員もいたが、休めば有給休暇を使わざるをえない。独身の社員からなぜ私たちは有給を使い、彼らは公休なのかと不満が出た。

【広告さん】うちも同じ不満が出ている。経営企画や広報・IRなど戦略部門は在宅でもできるが、月次の決算処理の経理とか人事部門でもIT化されていない紙の申請書類を扱う担当は出社比率が高い。営業部門は出社比率が高い。在宅しやすい部署とそうでない部署の社員間の軋轢も出ている。

女性社員が大激怒 Zoomセクハラ

――会議などはZoomを使ってやることが多いですが、コミュニケーションはうまくできていますか。

【サービスさん】最初は慣れていない社員が多くていろんな問題が発生した。画面の背景に自宅の風景が映ることを嫌がる社員もいた。今では操作によって画面の背景を変えられることを知っている人も多いが、それを知らない女性社員の部屋に干してある下着が映ってしまい、会議は音声だけにしてほしいという苦情が人事にきた。

女性社員の部屋
イラスト=辛酸なめ子

【ITさん】当社もZoomの部署内ミーティング中に、先輩社員から「彼女を見せろ」と何度も言われた後輩が、怒って切ってしまったという話がある。あるいは「奥さんを見せろ」とか。互いに在宅中ということで、仕事とプライベートの境がなくなることで、パワハラ、セクハラ問題に発展する可能性もある。在宅勤務中の禁止事項など新たなルールを設ける必要があるな。

【広告さん】リモートハラスメントっぽいのはあった。ある部長がとくに用もないのにZoomで「皆出てこい、元気か?」と呼びかけた。女性社員が化粧をしたくないのでマスクをして顔を出したら「なんで家なのにマスクをしているんだ!」と言われたというクレームがきた。本人は「大きなお世話だろう」と言っていたが(笑)。

【建設さん】やはりWebの会議はちょっと違う。対面の会議だと、朝まで生テレビではないが、誰かが話していても割り込んで自分の主張を述べたり、ワイガヤになるが、Webは話し終えるまで口を出すことがない。その結果、時間切れで結論が出ないで終わることもある。名前を名乗って「いいですか」と言わないと入りづらい。

【サービスさん】確かに会議の時間を1時間と決めてやるので一言も発言しない社員もいる。しかも最初の頃はビデオをオンにしないで画面に顔写真を貼り付けている社員もいた。でも本当に参加しているのか、寝ているのかどうしても気になる。途中で司会者が「○○君、生きていますか~」と声をかけると「生きていま~す、参加していま~す」という返事が返ってきた(笑)。

【広告さん】Web会議だとさすがにパジャマ姿で出る人はいないが、服装は自由だから私服の人が多い。でも中にはちゃんとネクタイを締め、背広を着て出る人が何人かいる。どうしてネクタイをしているんですか?と聞いたら「自分の戦闘服です。家だとダラダラ仕事をしてしまうので」と言っていた。そういう人は50歳以上の人が多いけどね(笑)。

【ITさん】でもWeb会議は本当に優秀かどうかを見極めるのに有効だよ。以前なら大きな部屋に10人ぐらい集まっても、最初に年上の人や上の立場の人が発言するのを聞いて「それはいいですね」とか、適当なことを言うだけで、さも意味のある発言をしているかのように聞こえたが、Webではそうはいかない。発言内容がはっきりとわかるし、この人はどのくらい深く考えているのか、どれほど優秀なのかが明確にわかる。