パソナグループの創業は1976年(当時はテンポラリーセンター)。長らくベンチャー企業の旗手とされてきたが、社歴は34年になる。ベンチャーというより、人材サービス業としては立派な老舗企業なのだ。現在、グループの従業員数は4800名にのぼる。
同社では2006年から毎週木曜日を「エコ曜日」に設定し、社員が環境問題や自然に関するスピーチをする「エコ朝礼」を実施している。
ある日、本部ビルで行われたエコ朝礼は次のようなものだった。8:50になると、社員はフロアの1カ所に集合し、「パソナグループの綱領」と「社員の信条」を唱和する。次がエコ・スピーチである。その日の当番は社会貢献室のマネージャー、山本哲史氏だった。
「みなさん、紅葉の季節です。日本の紅葉が世界でいちばん美しいということをご存じでしたか。日本には26種もの広葉樹があり、色彩のバリエーションが豊かだからです。実は、26種というのは大陸の2倍です。大陸の広葉樹は氷河期に多くが滅びましたが、日本は暖流の影響等で、寒さに弱い広葉樹が生き残ることができたと考えられます……」
短いが内容のあるスピーチだ。山本さんに声をかけてみると「いやいや、NHKスペシャルで見たままを話しただけです」とのこと。
エコ朝礼でエコ・スピーチをするには、日ごろから環境問題やリサイクルについて、アンテナを張っていなくてはならない。エコに関するスピーチは社員の意識を高めているようだ。
現在、多くの企業が環境問題やCO 2削減についての啓蒙活動を行っている。大抵は講演会を催したり、環境問題の担当者が声を枯らして「みなさんも協力してください」と叫ぶだけだ。パソナグループのように、朝礼の場を利用し、自然なやり方で社員に環境問題を感じさせているところは稀だと思う。
(尾関裕士=撮影)