韓国銀行のイ・ジュヨル総裁が反論「過剰な調整」
それにもかかわらず、下方修正を受けて、韓国銀行のイ・ジュヨル総裁は、「韓銀の1カ月前の韓国経済成長率展望値をマイナス修正しなければならないほど大きな環境変化があるとは思わない」という見解を明らかにしています。さらにイ総裁は、6月25日、「物価安定目標の運営状況点検」についての記者懇談会で「IMFが世界経済展望値を大幅に引き下げ、韓国に及ぼすショックの度合いをやや過剰に調整したのではないかという印象を消すことができない」と話しています。
また、IMFの見通しについて韓国政府は、「わが国は先進国のなかで唯一、来年末にGDP=国内総生産が新型コロナウイルスの感染拡大以前の水準に回復すると予想されている」として、「感染防止対策の成果が反映されたものとみられる」と説明をしています。
そもそも、韓国の2カ月で0.9ポイントの引き下げは「過激」なのでしょうか。他国と比べると、アメリカは▲5.9%から▲8%へ2.1%の下方修正、日本は▲5.2%から▲5.8%への0.6%の下方修正、ユーロ圏は▲7.5%から▲10.2%の2.7%の下方修正となり、開発途上国として分類される中国は1.2%から1%への0.2%の下方修正となっています。
4月時点での韓国の経済見通しがマイナス1.2%とそもそも凹みが少ない予想となっており、今回の0.9%の引き下げはそれほど目くじらを立てる必要性はないでしょう。韓国経済は雇用情勢が悪化しており、「持てる者と持たざる者」の格差が開いていることから、国内での不満がたまっています。国外に視点を置き換える政治手法によって国民の怒りの矛先をそらしているため、今回もその一環だと言えるでしょう。
韓国の家計と民間企業の負債、GDPの2倍超
韓国では格差に伴い、家計の負債が増加しています。中央日報によると、「韓国の家計と民間企業の負債が初めて国内総生産(GDP)の2倍を超えた」と伝えています。韓国銀行によると、民間信用(貸付・債権など)は3月末現在で3866兆ウォン(約344兆円)に達し、GDP比201.1%を記録しています。債務増加速度も急で、GDP比の民間信用の割合はこの1年間で12.3ポイント上昇していました。そのさなかに新型コロナウイルス問題が起きたのです。
追い詰められた自営業者は最悪の事態に備えて現金確保に乗り出しました。4~6月期には民間信用の割合がさらに急上昇する可能性が高いです。最初に述べましたが、韓国銀行は新型コロナウイルスの影響が年末まで続く場合、最大76万世帯が破産し、50.5%と半分以上の企業が利子を払うことすらできない事態が起きうると警告しています。