宅老所とは、認知症など介護が必要な高齢者向けに提供されている小規模の在宅介護支援施設。2006年の介護保険制度見直しによって登場した「小規模多機能型居宅介護」のモデルとなった。

最大の特徴は、特別養護施設等と違い、一般の民家などを利用しているため、被介護者が自宅に近い環境で過ごせることだ。これは、もともと自宅で介護を行ってきた人々が、近所の高齢者の介護も受け入れていくというボランティア精神から、草の根的に広がってきたものであるため。その成り立ちから、地価が高く住宅環境が悪い都市部よりも地方で普及しており、全国で約1000カ所程度存在すると見られる。

しかし、宅老所のうち、介護保険の適用を受けない事業者には課題もある。それは「宿泊施設か否か」という問題だ。宅老所は本来、デイサービスを中心とする施設ではあるが、被介護者の家族からの要望でショートステイ(一時的な宿泊)を行う事業者もある。一方、そこに目をつけ、「ショートステイを行う宅老所」をうたった悪質業者が登場。劣悪な環境で宿泊希望者を受け入れ、高額な宿泊費を取っているというケースも一部にはある。早急な実態の把握が必要だが、そもそも厚生労働省の定める「有料老人ホーム」の定義が曖昧であるため、宅老所の事業者が届け出を行っているかどうかは自治体によってまちまちであり、行政の管理が及んでいないというのが実態だ。

とはいえ、あまりに杓子定規な規制をかけると、宅老所の長所であるフレキシブルさが失われかねない。高齢者ケアの一形態として今後もそのあり方が模索される業態といえそうだ。