なぜ米国でも「リーダーの大多数は男性」なのか

世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス、フェイスブックの最高執行責任者(COO)のシェリル・サンドバーグ氏が、2013年に発表した著書『LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲』。「一歩を踏み出す」というタイトルを持つ本書は、本国アメリカでも100万部以上を売り上げ、全世界でベストセラーになりました。

タイム誌が選ぶ「世界で最も影響力のある100人」にも名を連ねる彼女が、なぜいまだにアメリカの政府や企業のリーダーの大多数は男性なのか。なぜ女性のリーダーが生まれにくいのか。その原因を、自身の経験もまじえて率直につづっており、女性活躍に関心のある読者の皆さんにも非常に参考になる著作だと思います。

〈女性は職場でさまざまな障害物に直面している。陰に陽に現れる男尊女卑の思想、性差別、そしてセクシャル・ハラスメント……。(中略)

社会に築かれた自分の外の障壁に加えて、女性は自分の中の障壁にも行く手を阻まれている。私たち女性は大望を掲げようとしない。それは自信がないからでもあるし、自ら名乗りを上げようとせず、一歩踏み出すべきときに引いてしまうからでもある。私たちは自分の内にネガティブな声を秘めていて、その声は人生を通じて囁きつづける――言いたいことをずばずば言うのははしたない、女だてらにむやみに積極的なのは見苦しい、男より威勢がいいのはいただけない……。私たちは、自分に対する期待を低めに設定する。相変わらず家事や育児の大半を引き受けている。夫やまだ生まれてもいない子供のために時間を確保しようとして、仕事上の目標を妥協する。男性の同僚に比べると、上の地位をめざす女性は少ない。他の女性のことをあげつらっているわけではない、私自身が同じ過ちを犯してきた。いやいや、ときにいまも犯している。

女性が力を手にするためには、この内なる障壁を打破することが欠かせない――これが、私の主張である。〉

(『LEAN IN(リーン・イン)女性、仕事、リーダーへの意欲』シェリル・サンドバーグ著、村井章子訳、日本経済新聞出版社、2013年、P15、P16)

「励まし」で高パフォーマンスを出す例も多い

なぜ女性は男性に比べてポストが上がることに対して一歩を踏み出すべきときに「引いて」しまうのか。程度の差はあると思いますが、女性はリスクを取るよりも、確実な道を慎重に進む傾向があるからかもしれません。

これも講演会などでよくお話しするのですが、たとえばあるポストに就くために必要なスキルが10あるとして、ある男性はそのうち3つしかスキルがないのに「私は10のうち最も大事な3つのスキルでトップクラスの実力を持っています。だから昇進させてください」とアピールする人が多いです。それに対して女性は、7つスキルを備えているのに「私は3つのスキルをまだ備えていませんから、昇進にはふさわしくありません」と答えてしまう人が多い。これは、自信が無いことのあらわれではないと思います。女性が男性よりすこし慎重なだけだと思います。

慎重であること、高いリスクを取らずに足元からこつこつと実績を重ねていく女性の特性は、ビジネスの現場で必ずしもマイナスばかりとはいえません。10のうち7つのスキルを備えた女性が、「あなたを信じています。あなたなら出来ます。男性たちを含めたなかでも、あなたが最適だと思います」とトップから励まされ、応援を受けることで、高いパフォーマンスを発揮する例も多いからです。