民間事業者が運営するショートステイ専用施設に注目!
ショートステイとは、在宅介護を受けている要介護者が特別養護老人ホームや老人保健施設などに短期間入所することのできるサービスのことである。
特別養護老人ホームや特定施設などに設置されたショートステイは「短期入所生活介護」、老人保健施設や療養型医療施設の運営するショートステイは「短期入所療養介護」と呼ばれている。介護保険が始まってから徐々に浸透し、日ごろ介護にかかわっている家族にとって、なくてはならないサービスと認識されるようになっている。
利用料は、介護保険で定められたサービス利用料に各施設が独自に設定する居住費(家賃制度)の合計額を支払う。その結果、施設の居室形態(多床室・個室・ユニット型個室)によって価格が異なるので、入所時に価格の確認が必要である。一般的には、要介護1で1日、自己負担額は2000円~3500円程度が相場といえる。これに、食費の全額自己負担分(1日2食分で約1300円)とおむつ代などの雑費、送迎費を合計した費用がかかる。
海外ではこうしたサービスを「レスパイト」(休息サービス)と呼び、介護者を介護から解放するサービスとして理解されている。介護する側が倒れてしまったら、在宅介護はその瞬間から成り立たなくなってしまう。介護に疲れ果てている介護者を救うことを制度運営のなかで考えていく必要性も指摘されているが、「介護者のための介護」という考え方が、日本でも広がっていくことが必要だ。
しかし、ショートステイの利用状況を見ると、特別養護老人ホームに入所できない高齢者の代替利用のケースも少なくない。ショートステイに利用できるベッド数が限られているなかで、特養入所に備えた利用が多くなると、ショートステイ本来の役割が果たせなくなる。多くのショートステイ施設が利用予定日の3カ月前から予約することができるが、その大半がすぐに埋まってしまうので、冠婚葬祭など急に利用が必要な事態が起こっても利用がかなわないケースも増えている。
こうした状況のなかで注目すべきは、民間事業者が介護保険の枠外でショートステイ専用の単独施設をオープンさせていることである。利用料を1日5000円から7000円に設定し、ビジネスホテル価格でサービスを提供している。利用の際に介護の質を十分に確認すれば、利用したいときにすぐ対応してくれるサービス機関と考えることもできるだろう。
地方都市では社会福祉法人などがショートステイ専用の単独施設(40床規模)を計画し、オープンさせているケースもある。
介護保険は2006年の改正制度施行によって、施設から在宅へと大きく舵取りされた。そのなかで、家族だけではどうにもならない事態に必ず直面するときがある。リハビリの専門家がよく指摘するのは、トレーニングのポイントは運動量ではなく継続することだそうだ。1日休んだ分を取り戻すために何日もトレーニングをする必要がある。介護の場合、1日でも休んだら要介護者の生命にかかわる。取り返すことができない綱渡りの毎日を支えるショートステイの利用という選択肢は、介護を始める段階でセーフティネットとして準備しておきたい。