そして第2の条件は、前述した団体加盟社からの「推薦状(証明書)を提出すること」となっている。この「推薦状(証明書)」には大きな問題がある。フリーランスの記者にとって、出版社は単なる取引先の一つにすぎない。そこに「会見参加のための推薦状」を頼むのは無理がある。出版社にとっては、社外の人間の連帯保証人にさせられるようなものだろう。

私は「推薦状」がないことを理由に事前登録者リストに入れない記者を少なくとも2人知っている。いずれも記者歴27年の私よりもキャリアが長く、複数の著書があるジャーナリストだ。

10年たっても変わらない閉鎖的な記者クラブ

私はこのような不条理を見過ごせない。自分だけが参加して後ろ手でドアを閉め、「名誉白人扱い」されることには耐えられない。そのため、今まで以上に幅広い記者が記者会見へ参加できるように何度も働きかけてきた。2010年6月8日には、当時の菅直人首相の記者会見で異常な実態を訴えたこともある(※3)

※3:官邸ホームページのアーカイブ「菅内閣総理大臣記者会見

しかし、いまだにオープンな会見は実現していない。会見の主催者である内閣記者会が実現のために動いたという話も寡聞にして聞かない。これは報道の場に身を置く者として、極めて恥ずかしい状態だと私は考えている。

また、たとえ「事前登録者リスト」に登録できた者でも、参加申込時には毎回「直近3カ月以内に各月1つ以上記事等を掲載していることを示すもの」を添える必要がある。条件は署名記事の提出だけではない。記事内容にも「総理や官邸の動向を報道するものに限る」という条件がつけられている。

※5:会見参加申込書
会見参加申込書

誰でも「初めての取材」はあるはずだ。官邸側が取材への扉を閉ざしておきながら、報道内容を限定する理由が理解できない。まさか取材もせずに書き飛ばした記事を3本書いてから官邸を取材しろということなのか。

フリーランスの登録者は11人だけ

こうした理不尽なハードルがあるために、フリーランスの記者で「事前登録者リスト」に載っている者は現在11人(カメラ1人、ペン記者10人)ほどしかいない。そして驚くべきことに、2012年12月26日に第2次安倍政権が発足してからは、一人も新しい登録者がいない。

いま、「事前登録者リスト」に名前を連ねているのは、全員が民主党政権時(首相会見が一部オープン化された2010年3月~安倍政権発足前)に登録した記者たちである。

7年以上も新規参入者を認めない記者会見は「異常」というしかない。これでも会見の主催者である内閣記者会は“自分たちは参加できている”と完全無視を貫き通すのだろうか。

報道に携わる者としての矜持が問われている。

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