「第一約束期間」で約1兆円の出費に

――日本の25%削減は絶対に達成不可能だと思いますか。

絶対とはいいませんが、極めて難しい目標だと思います。2020年まであと10年しかないわけで、その間に急激な技術革新が起こるとはとても思えません。ただ、不景気が続いており、日本の人口も減少傾向で、温暖化対策費用を含めた国内の高コスト体質を嫌った企業が海外に生産をシフトしていくという、あまり嬉しくない理由で、今後、排出量がある程度「自然減」することは考えられます。

25%削減に関して一つだけ確実にいえることは、これが国際的に突出した目標であり、公平性が確保されないということです。経済産業省系の財団法人地球環境産業技術研究機構(京都府木津川市)の試算では、2020年までの削減目標を比較した場合、日本は二酸化炭素1トンあたり476ドルの費用がかかるのに対し、アメリカは60ドル、EUは48ドルしかかかりません。

――厳しい目標を掲げることで、技術革新が促されるという意見がありますが。

過去、日本は技術力で円高や石油ショックを克服したのだから、今回も乗り切れるという議論は、日本海海戦でロシアのバルチック艦隊を破ったのだから、真珠湾を叩けばアメリカに勝てるという議論と同じです。また、技術革新を促す狙いで、自ら25%削減を課す必要はありません。15%でも十分厳しい目標ですよ。

――「第一約束期間」で削減を達成できなかった分は、排出権を買ってカバーするのでしょうか。

京都議定書では、削減目標を達成できないときは、海外から排出権を買って補ってもよいとされています。要は、金を払ってすませることができる。世界銀行の推計では、日本は「第一約束期間」の5年間に、官民合計で4億トンの排出権を海外から買わなくてはなりません。

排出権価格は、過去トン当たり8ユーロから30ユーロ程度で推移しているので、仮に18ユーロで買い付けるとすれば、9400億円程度が必要になる。

排出権購入以外にも、政府予算の中から毎年1兆2000億円程度(平成20年度は1兆2000億円、同21年度は1兆1764億円)が、地球温暖化対策の予算として経済産業省、環境省、農林水産省などに配分されています。

さらに日本政府は2012年までに発展途上国に1兆7500億円(対外的には150億ドルと説明)を支援する「鳩山イニシアチブ」を発表しています。

――膨大な金を海外にばら撒いているというわけですね。

かつてエジプトのサダト大統領(在任1970~1981年)は、外国の要人に会うとき、古代エジプトの王族の墓の副葬品として入っていた木像、装飾品、猫や鳥のミイラなどを手土産に持っていったため、エジプトの文化遺産がかなり流出したそうです。鳩山首相は、日本の国富を猫のミイラのように扱っているように思えてなりません。