公明党の最終カードをちらつかせた強硬論
ここに清算主義の根本がある。足腰の弱い、支援なくば恐慌下で潰れてしまうような企業や人は、田中・竹下系の内閣では重要な票田だったが、清和会内閣ではそうではない。清和会内閣で一貫して法人税減税が行われてきたのはその派閥の性質によるところが多い。法人税減税は中小零細企業よりも大企業にとってより便益となるからである。
このような状況下で再分配傾向の薄い清和会内閣の補助・助力として期待されていたのが小渕恵三内閣時代から連立を組む公明党の存在である。公明党は元来、その支持母体・創価学会を中心として、大都市部の低所得者層や零細自営業者を支持基盤としており、田中・竹下系の政権と政策的に相性が良い。
公明党が初めて連立を組んだのが経世会の小渕内閣であったこともその証左である。ところが前述のとおり、小渕首相が急逝して「棚ぼた」的に清和会・文教族の森喜朗が首班につくと、公明党は政策的に肌が合わない自民党・清和会との連立を、実に20年の長きにわたって強いられたのであった。もっともこの部分には公明党の政権権力への拘泥があったし、また公明党の支持基盤自体が経済成長によって中産階級に成長した側面もあった。とはいえ今回のコロナ騒動で、当初「困窮世帯に限定して30万円」としたものを「一律10万円給付」に転換させたのは、公明党による「連立離脱」という最終カードをちらつかせた強硬論に官邸が押されたからと言えよう。
安倍晋三の経済対策はどれも後付け・小出し
大企業と都市部の中産階級の支持を受ける清和会内閣は、根底に「弱い者は潰れてしまっても、その溝を優秀な会社や起業家が埋めるので構わない」という清算主義的観念があるとはすでに述べた。コロナ禍で様々な経済対策が打ち出され、またされる予定だが、どれも後付け・小出しであり、「強者の発想」に拘泥する清和会内閣の根底に変化はないように思える。
東証一部上場企業では繊維業のレナウンがコロナ禍で倒産したが、この会社の倒産はコロナ禍以前からの経営基盤弱体をその始祖としていた。多くの大企業は、コロナ禍での一時的な利益の激減すらも内部留保や大規模融資によって概ね乗り切るだろう。それもこれも、2000年の森喜朗内閣から計15年以上も、大企業を支持基盤とした大企業優遇政策が清和会内閣によって実行されてきたからだ。