ネット書店の後押しで急成長する中国絵本市場

蒲蒲蘭絵本館の設立から日の浅いうちに、中国絵本市場は急展開していく。2006年ごろからネット書店が登場し、児童書販売に力を入れたことで絵本市場は大きく発展した。

2007年から民営出版社を中心に多数の出版社が絵本事業に参入。市場を牽引するECサイト「当当ネット」と出版社が独占販売契約を結ぶことで、当当発の月間(!)100万~200万部のヒット作品も生まれた。

中国上海国際児童図書フェアの様子
写真提供=北京蒲蒲蘭文化発展有限公司
中国上海国際児童図書フェアの様子

蒲蒲蘭は、契約条件などを鑑みて当当との独占契約は基本的には避けてきた。むしろ当当側が、蒲蒲蘭の商品力を見込んで販売に力を入れた。そのおかげもあり、『くまくんのあかちゃんえほん』シリーズは、累計販売数が約1000万冊の大ヒット作品となった。

業績は倍々ペースで伸張、絵本のタイトル数は最多に

こののち、中国絵本市場は2010年から2015年までは「高度成長期」に突入する。このころまでに世界の著名な絵本作品はほぼ中国でも出版され尽くしたと言っていい。

国際児童図書見本市「ボローニャ・ブックフェア」や、世界最大書籍見本市「フランクフルト・ブックフェア」には中国の出版社が殺到した。出版権獲得競争が激化して契約金が高騰。2015年には投資会社が参入して海外企業の絵本出版権の「爆買い」が発生した。また、前後して上場している出版社が有力タイトルを持つ中国の絵本会社の買収に乗り出した。

中国上海国際児童図書フェアの様子
写真提供=北京蒲蒲蘭文化発展有限公司
中国上海国際児童図書フェアの様子

蒲蒲蘭も買収提案をされるも、事業の独立性・独自性を重視してすべてのオファーを断っている。独立を保ちながら欧米のロングセラー作品やヒット作品のライツの導入、オリジナル作品の出版に取り組んだ。編集顧問として本社から人材を集め、編集者や作家の育成にも力を入れたのもこの時期だった。

正しい判断だった。2010年には自社刊行物(正確には提携出版だが)の累計は約200タイトルだったが、黒字転換を果たした2014年には同業者中最多の400に達した。2015、2016年は倍々ペースで伸ばした業績からも明らかだ。

2017年になると状況が一変して「混迷期」へ

ところが中国絵本市場は2017年になると状況が一変して「混迷期」に入る。原因は中国政府からの指導だ。中国の伝統・歴史を学べる国産の児童書を作りなさい、「輸入と輸出を1対1にせよ」(国産絵本の権利を1作売ったら海外ものを1作出してもいい)という行政指導が出版社に行われるようになった。突然輸出を増やせるはずもなく、新刊の刊行点数は急激に減少した。