すかいらーくでは以前から注力していた

実はすかいらーくHDではコロナ以前から両サービスとも売上高が右肩上がりで伸びており、2019年度はデリバリーが前年度比7%増の231億円、テイクアウトが25%増の89億円だった。両売上高の全体に占める割合は9%にもなる。いずれのシステム構築も一朝一夕ではできない。以前から注力していたことが、3月の既存店売上高をこのレベルで踏みとどまらせたともいえる。

「宅配ビジネス」は年々拡大している。
図表、写真=すかいらーくHDウェブサイト
「宅配ビジネス」は年々拡大している。

ただし、裏を返せば、それだけ準備をしていたすかいらーくHDであっても、これまでデリバリーとテイクアウトの売上高は全体の9%程度にすぎなかったのだ。まったく取り組んでいなかった外食企業が急ごしらえでデリバリーとテイクアウトに対応しても、売り上げが減った分をカバーできるとは考えづらい。その寄与効果は限定的とみたほうがいいだろう。

一方、デリバリー代行サービス「出前館」は活況を呈している。月間のオーダー数は昨年12月から今年2月までは月に270万件台とおおむね横ばいで推移していたが、3月は2月比11%増の303万件と大きく伸びた。外出自粛で出前館を利用する人が増えたのだろう。出前館も配達員による直接の手渡しを避けるシステムを導入し、安全性をアピールしている。

百貨店とアパレルは特に厳しい

次は小売業を見ていこう。外食は総じて厳しいが、小売りは業種によって大きく異なる。

特に厳しいのが百貨店だ。先述した通り、三越伊勢丹HDは3月の国内百貨店の既存店売上高が大幅に落ち込んでいる。高島屋も、高島屋と国内百貨店子会社の合計の既存店売上高が35.1%減(速報値)と大幅マイナスだった。J・フロントリテイリングは傘下の大丸松坂屋百貨店の合計売上高が43.0%減(同)となっている。

外出自粛や休業、営業時間の短縮が影響したことと、訪日外国人(インバウンド)が減少したことが響いた。百貨店は東京都の休業要請対象には含まれなかったが、各社は緊急事態宣言の対象7都府県でほぼ全面休業を貫いている。苦境は今後も続くだろう。

衣料品を扱う事業者も厳しい。アパレル大手のワールドは3月の既存店売上高が41.9%減、レナウンは42.5%減だった。主要販路の百貨店の営業時間短縮や休業が響いた。紳士服大手の青山商事は41.2%減だった。卒業式や入学式の見送りが相次いだことで、スーツ事業が大きく落ち込んだ。消費者の生活防衛意識が高まり、「不要不急」の自粛がうたわれるなかでは、衣料品は今後も厳しい状況が続くとみられる。