新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクや紙類が不足している。転売サイトなどを避けて定価で購入するには、開店前の行列に並ばなければいけない。米国発の経済学書『不道徳な経済学 転売屋は社会に役立つ』(早川書房)を翻訳した作家の橘玲氏は「価格の引き上げを認めれば、このバカげた行列はすぐになくすことができる」という――。
マスクを買うために並んでいる人たち=2020年3月4日(韓国・ソウル)
写真=AFP/時事通信フォト
マスクを買うために並んでいる人たち=2020年3月4日(韓国・ソウル)

SNSで拡張される「不安と同調のフィードバック」

世の中には一定数の「強い不安を感じるひと(日本人は生得的に多いとされる)」がいて、このひとたちはなにかしないと不安を抑えられないので、SNSで訴えたり、マスクやトイレットペーパーを買い占めたり、目の前にある機会に飛びついて積極的かつ衝動的に行動します。

やはり世の中には「同調圧力に弱いひと」が、こちらはかなりの割合いて(やはり日本人は生得的に多いとされる)、「不安感が強いひと」に引きずられて同じ行動をします。この同調性は、「群れる」ことがもっとも効果的な生存戦略だったことから進化論的に説明できます。

こうして多くのひとが同調するようになると、冷静で知的なひとも、自分も同調しないと不利になると合理的に判断して大衆に追随するようになります。これが「全体主義(ファシズム)の起源」です。これは社会心理学の基本ですが、感染症はこの構図を誰でもわかるように可視化します。SNSにはこうした「不安と同調のフィードバック」を拡張する機能があるので、より対処を難しくしています。