そして、小売業である「郵便局株式会社」と、宅配業である「郵便事業株式会社」を一緒の会社にしてしまった。例えば、コンビニに行ったらそこで宅配の手配ができますが、同じ会社がやっているわけではありません。給与体系もマーケティング戦略も全く異なるこの2つの会社を一緒にすることで、経営がこじれました。これでは現場も自由な商品開発をできず、今回の問題が起きたのです。

今後、日本郵政が復活するためにまず考えられるのは、株式売却を進め、国内市場がどんどん縮小している郵便事業で早く国際的な展開をすること。国際宅配便はフェデラルエクスプレスやDHLの躍進を見ればわかるように、市場がどんどん広がっているわけです。ドイチェポスト(Deutsche Post)が日本より10年以上も前に民営化した最大の理由は、海外展開のためで、ドイツ国内だけでは先が見えないという判断のもと、民営化の後DHLを買収しました。

20年1月6日、元総務大臣の増田寛也氏が日本郵政の社長に就任しました。彼にはぜひ、海外戦略を含めた大胆な改革をしてもらいたいと思っています。そうしないとこれからは縮小の一途だと思います。

民営化の路線は間違っていない

郵政民営化の後退の責任は与党にもあります。自民党から民主党に政権が移ろうとする直前期から、かんぽの宿の売却問題で日本郵政初代社長の西川善文氏が激しく批判されましたよね。その空気を民主党が引き継いでしまったのです。自民党の終わりの政権と民主党政権はとても似ていて、マクロ政策を見てもやっていることがほとんど同じでした。

保険の不正販売問題で、かんぽ生命保険には世間から大きな非難の目が向けられました。でも、そうかといって「国営に戻せ」という世論は起こっていませんよね。だから民営化という路線自体は間違っていなかったのです。腐敗した日本郵政が再生するためには、とにかく早く株を売ることに尽きます。私は増田氏に、とにかく株を早く売って、日本郵政を民間のガバナンスが利く組織にするよう声を大にして言いたいです。

(構成=万亀すぱえ 写真=時事通信フォト)
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