アジア初「事実上の国境封鎖」を宣言

マレーシアは3月18日、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、突如として「事実上の国境封鎖」と「全土での外出禁止」に踏み切った。

これまで、中国や韓国、欧州、イランなどの陰に隠れ、新型コロナウイルス関連で特段目立つこともなかったが、3月15日以降急速な感染者数の伸びを記録している。15日に190人、16日に125人と2日間だけで新たに315人の感染を確認するや否や、16日当日の夜22時からマレーシアのムヒディン・ヤシン首相が新型コロナウイルス対策について緊急のテレビ演説を行った。

キャッシュレスペイやスマートフォンアプリによるデリバリー(宅配)が浸透しているマレーシアでは屋台の料理もオンライン注文が可能。“封鎖措置”が始まった3月18日、注文が相次いだ
撮影=海野麻実
キャッシュレスペイやスマートフォンアプリによるデリバリー(宅配)が浸透しているマレーシアでは屋台の料理もオンライン注文が可能。“封鎖措置”が始まった3月18日、注文が相次いだ

緊急演説が敢行されたスピード感もさることながら、その内容も極めて強硬で気迫に満ちたものであった。演説からわずか1日だけ置いた18日から31日までの2週間、マレーシア国民の出国と外国人の入国を全面的に禁止する「事実上の国境封鎖」を宣言した。外国人観光客の入国は一切禁止され、現在、海外にいる帰国者には検査の受診と、14日間の隔離期間を命じる極めて厳重な措置が発表された。

首相の演説が3月16日22時に始まると、マレーシア人は車を止めてスマートフォンで中継に見入った
首相の演説が3月16日22時に始まると、マレーシア人は車を止めてスマートフォンで中継に見入った

イスラム教徒にとっては欠かせない金曜礼拝を含むモスクでの全宗教行事は延期になる。幼稚園、小中高等学校から大学までのあらゆる教育機関のほか、すべての政府機関および、民間企業の閉鎖が求められたほか、スポーツ大会や文化的イベントなど大規模な集会も禁止される。例外的に、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、薬局など日用品を取り扱う店舗や、銀行などは営業を許可される。あらゆる社会的活動や人々の移動などを最小限にすることで、感染リスクを早い段階で最大限に封じ込めることが狙いだという。