60歳から年金をもらえるがデメリットをよく理解して
老齢基礎年金の受給が始まるのは、65歳になってからだが、希望すれば60歳から65歳になるまでの間に先に受け取り始める「繰り上げ受給」というしくみもある。この場合は、1カ月当たり0.5%年金額が減額され、減額された支給額は一生変わらない。図1のように、64歳からもらい始めた場合は、65歳からもらい始める場合の94%、63歳からもらい始めた場合は88%と減っていき、60歳からもらい始めた場合は、70%の受給率となる。65歳からもらい始める老齢基礎年金の額を満額(最高の40年加入)の年額79万2100円(2008年度価額)とすると、60歳からもらい始めた場合は、70%の年額55万4500円になる(昭和16年4月2日以降に生まれた人の場合)。
一度繰り上げ受給の選択をすると、取り消したり、もとに戻したりできないので、慎重に。繰り上げ受給を選択するデメリットもいくつかある。
まず、第1に減らされた年金額は、一生そのままの額になる。65歳になっても引き上げられず、減額されたままの額で支給される。付加年金についても同様。次に、繰り上げ受給選択後に障害状態になっても、原則として障害年金はもらえなくなる。また、繰り上げ受給を選択した第一号被保険者の夫が亡くなった場合には、60~64歳の妻に支給される寡婦年金がもらえなくなるし、繰り上げ受給を選択した妻は、会社員の夫が亡くなっても、65歳になるまでは遺族厚生年金を併給できない。以上のデメリットを理解したうえで、よく考えて選択したほうがよい。65歳以前で生活に困っていないのであれば、普通に65歳から受給するほうがいいだろう。
この老齢基礎年金の繰り上げ受給と勘違いして、60歳から65歳までの間にもらい始める(もらい始める時期は、生年月日によって違う)特別支給の老齢厚生年金を「65歳以前からもらい始めるとソンする」と誤解している人もいるが、特別支給の老齢厚生年金は、もらえる時期にキチンともらおう。特別支給の老齢厚生年金は、繰り下げ制度がないため、遅くもらっても増えないし、年金受給の申請を忘れると、5年で時効になるから、もらえなくなってしまうこともあるからだ。
何かのときのために知っておきたいのは、年金を担保にして独立行政法人福祉医療機構からお金を借りる「年金担保貸付」という制度。住居、医療、冠婚葬祭などのために必要な場合に一定額が借りられる。借りた分は、将来受け取る年金から差し引かれる。いわば年金の前借り。ただし、返済が終了するまでは年金の全部または一部を受け取れなくなるので、注意が必要。生活費として年金をあてにしている人や、そもそももらえる年金額が少ないという人には、おすすめできない。
また、民間の金融会社で扱っている「年金担保融資」「年金信用融資」などは、違法で悪質なものが多い。年金証書や年金受給用口座の預金通帳、キャッシュカードなどを担保として取り上げることは法律上違反とされている。くれぐれもご注意を。