どういった状態なら内縁関係といえるのか

裁判では、そもそも内縁関係が成立しているかどうかが争いになる場合があります。

婚姻届を提出していないという点を除けば、一般の夫婦と同じという状態が内縁関係です。そのため、カップル同士が、長年交際していたり、単に同棲していたりしているだけでは、内縁関係が成立しているとはいえません。

裁判上、内縁関係が成立しているかどうかを判断する際に重視されるのは、次のような事実です。

①結婚式、披露宴を挙げていること
②婚約指輪、結婚指輪を交換していること
③長期間、同居していること
④子がいること
⑤親戚や知人が夫婦であると広く認識していること

上記のような事実があり、その事実を立証するための証拠があれば、法律上保護される内縁関係であると認定される可能性が高いと考えます。

ちなみに、内縁関係を解消する際にも、法律婚と同様の権利や義務が認められることになります。

すなわち、カップル間に財産があれば、財産分与を請求したり、カップル間に未成熟子(まだ経済的に自立できていない子供)がいて、父親が子を認知している場合には、父親に対して養育費を請求したりすることも可能です。また、不貞行為以外でも、婚姻関係を破綻させた責任のある当事者は、相手方に慰謝料を支払う義務を負うことになります。

同性カップル間の不貞行為で慰謝料は取れるのか

それでは、同性カップル間で不貞行為があった場合は、慰謝料請求をすることは可能なのでしょうか。

現在の日本の法律では同性間の婚姻は認められていないため、「婚姻に準じる」関係である内縁関係も、同性間では認められないようにも思われます。

この点に関して、最近、画期的な判決が出ました。

女性同士のカップル間で、カップルの一方が他の男性と不貞行為をしたことにより破局したとして慰謝料を請求した事案がありました。それについて裁判所は、世界的にみれば、同性婚を認める国や登録パートナーシップの関係を公的に認証する制度を採用している国が相当数あり、日本国内においてもパートナーシップ制度を採用する地方自治体が現れてきていることから、同性間の内縁関係も婚姻に準ずる関係として法律上保護されるべきであるとしました。

そのうえで、本件では、同性カップルが約7年間同居していること、同性婚が認められているアメリカのニューヨーク州で結婚していること、日本でも結婚式および披露宴を開いていること、第三者からの精子提供による人工授精を受けることで妊娠・出産をすることを計画していたこと、子育てのためのマンションの購入を計画していたことなどを重視し、同性カップルが婚姻に準ずる関係にあったことを認定し、不貞行為をした側に110万円の慰謝料の支払い義務を認めました(東京高裁令和2年3月4日判決)。